家内が、ちょっと離れたショッピングモールに行きたいと言います。
なんか催し物でもあるのか、よくわかりませんが、それなら天気も良いし今日行こうということに。
そのモールには無印良品も入っていて、ぼくはルーズリーフの用紙をセットできるリフィルノートのB5版のやつを買いたかったのです。
モールに着くと、それぞれ自分の行きたい売り場に行き、30分後に決めた場所のベンチで落ちあい、その後は食品売り場へ行きました。今日は魚介類が安いのだそうです。
パン屋も目に入ったので、一旦スーパーから出て、ぼくだけパン屋に入りました。
小さくて甘いクロワッサンの売り場で、爺さんが大きな声で女の人と話をしていました。
知り合いなんだろうなと思ってましたが、よく見ると赤の他人。
欲しいパンをトレイに乗せて、列になっているレジに行くと、ぼくの前にさっきの爺さん。小さなクロワッサンが10個入った500円の袋を一つだけ持ってます。
レジは二つあって、その爺さんの相手をしたのは50代のメガネかけた女性でした。
「540円です」
500円の袋に消費税が40円という事ですね。
「540円?」
爺さんは確かめ、レジの係のおばさんは「そうです」と返事。
「40円」
「はい」
爺さんがポケットから出したのは、プラスチックの四角いケース。中は仕切られていて、小銭が金種ごとに分けられてて、それぞれの区切りごとに蓋がついてます。もしかするとピルケース?
爺さんは、10円玉を4つ取り出して払いました。
「あと500円です」
レジの係の人は、メガネをかけているせいなのでしょうか、それともその時の精神状態のせいでしょうか、目が怖かったです。
「500円」
爺さんは確認をします。レジは一向に進みません。
これからも時間がかかりそうです。
仕方ないなと思ったその時、別のおばちゃんがさっと来て、ぼくのトレイを取って、お勘定をしてくれました。
ぼくがお金を払い終わっても、その爺さんの勘定は終わってません。
こんなこと言うのはナンですが、その爺さん臭い。垢の匂いがします。たぶんホームレスでは無いと思うのですが、一人暮らしで風呂はあまり入らないのでしょう。
おそらく一人暮らしが寂しいと、買い物に来て、客や店員となんやかやと話すのが好きなんじゃ無いかな。
ぼくは、買ったパンを無印良品の手提げ紙袋に放り込んで、食品売り場のレジに並んでいた家内のところに戻りました。
普段来ない店で、レジは無人の自動レジ。
一番最初にレジ袋が要るかと質問がきたので、家内は要るというボタンを押します。
そしたらレジ袋のバーコードを読み取らせてくれというメッセージ。
レジ袋、どこにあるかわからない。
面倒なので、買った牛乳のバーコードを読ませたら、エラーで止まってしまいました。
近くにいた、丸くて柔らかい感じのおばちゃんがすぐに来てくれて、レジ袋を出してそのコードを読み込まさせてエラー回避で、精算の続きができました。
その時、さっきのパン屋にいた爺さんが、その店員のところにやってきて、なんか言いました。
ぼくは爺さんの言っていることがよくわかりませんでした。
喋り方が聞き取りにくいんです。
しかし、そのおばちゃんは、素晴らしいのです。
「はい、わかりました」と言って、制服のポケットからセロテープを出し、ちょっとだけ切って、爺さんがさっきから手に持ちっぱなしのコインケース(あるいはピルケース)の蓋に、そのテープの切れっ端を「はい」と貼ってあげたのです。
よく理解できない光景でした。
でも、爺さんはとても満足そうに去っていったのです。
なんか言って、相手にしてもらいたかっただけなのでしょう。
おそらく、あの爺さんはよくこのモールにやってきて、あのおばちゃんは過去に何回か爺さんの相手をしたことがあり、どうすれば黙って帰っていくか知っているんでしょう。
どう言えばいいのか、でも人間って、そんなんでも相手になってもらえるのが嬉しいのですね。
社会における孤独って、そういう感じかな。
いつも行くスーパーでも、爺さん一人の買い物が多くて、店員は上手に世間話の相手をしてあげてるんですよ。そういうスーパーが繁盛するの。
家内がいてくれて良かった。
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