一時期、YouTubeで猪木と関わりのあった人が、猪木のことを語る動画を探して見るってのにハマってました。
アントニオ猪木が亡くなった後のことです。
プロレスラーとしても魅力のあった人でしたが、リング以外でのことも、普通じゃ無いわけで、良いことも悪いことも、嘘もホントも、とにかく面白いんです。
プロレスラーとしてぼくらファンを魅了し、憧れとして多くのプロレスラーがその道に入ってくる理由と目標になり、彼を利用して上手い目に会った連中もいれば、彼のせいで手痛い損失を受けた者もいる。
プロレス的な人生と言えば良いんでしょうか。
「アントニオ猪木を探して」と言うドキュメンタリー映画ができるってのを知ってはいたのです。観たいなとも思ってました。
そして昨日、この作品がPrime Video に上がっているのを発見しました。
題名が良いですね。尻尾の「さがして」と言うところがなんとも。
基本的に、アントニオ猪木と関わりのあった人たちが、彼を語るって感じの作品です。
現在の新日本プロレスと言う会社の協力で作ったのでしょうか、出てくる人たちの差し障りの無さを感じました。
でも、冒頭、ブラジルに行くのです。
横浜からブラジルに移住した猪木家が過ごした場所を訪れ、その頃猪木家と関わりのあった人たち(全員おじいちゃんです)の当時の話を聞きます。
ブラジルに着いて、最初に猪木家は一年半の契約でコーヒー農園で働きます。かなり過酷な労働だったようです。その時に、猪木家の横に住んでいた人が、懐かしい農園に案内してくれます。
そこで、現在の農園オーナーに会い、昔、この農場で働いていた青年(少年)が日本に渡ってプロレスのチャンピオンになって人気者になったんだよと、ポルトガル語で嬉しそうに説明したりします。
その農園に行く前に、街の市場が映り、やはり日系のじいちゃんが、「ここで荷物運びをしていた青年が、力道山に連れられて日本に帰って、プロレスのスターになったなんて、本当に夢物語だね」と言うのですが、その言葉に重なるようなコーヒー農園でのシーンでした。
確かに、アントニオ猪木の人生って、夢物語ですね。夢を見てるような人生。波乱万丈。
力道山の目に止まり、日本に連れて帰られて、しかし師匠はナイトクラブで刺されて亡くなる。
力道山亡き後の日本プロレスをジャイアント馬場と共に支え盛り上げ、自身がスターになるが、会社内部でクーデターを画策したという理由で突然クビになってしまう。
上がるリングを失い、子供番組でアントン体操と言う体操のお兄さんになっていた頃も、ぼくは見ています。
そして、自分の会社、新日本プロレスを立ち上げ、女優と結婚し、やがてテレビ放送契約もテレビ朝日と結び、呼んでくる外人レスラーはしょぼいのばかりだったけど、自前でスター外人レスラーを育て、大人気プロレス会社として花開かせる。
一方、ある化学者の考えに賛同し、その研究結果の商品化のスポンサーとなり、いつまで経っても完成しない研究のために借金まみれとなり、多くに人に非難されると言うリング上以外の出来事も彼の人生の大きな部分です。
そして、参議院議員となり、イラクで人質になっていた日本人たちを全員連れて帰国したり、北朝鮮で平和の祭典というプロレス興業を行ったりと、これを波乱万丈と言わずに何をそう呼びますか。
まさしく「自分の前に道はなく、自分の後に道はできる。迷わず行けよ、行けば分かるさ」という人生でしょ。
だから関係者が語るちょっとしたエピソードがすごく面白いのです。
この映画は、子供の頃から猪木のファンで、その成長にともなってその時期ごとの小さなエピソードを繋げていくという、品質的にはテレビの再現フィルム程度の寸劇の連続があったりします。この程度のお話をわざわざ映画の中に入れてくる理由がわからない。
基本的に、全体がテレビの二時間番組程度のクオリティーかそれ以下。
先ほども書きましたが、語る人選も今の新日本プロレス寄りで猪木との接点があんまり無さそうな人たちに語らせるので、もっとちゃんと作って欲しかったという、少し残念な気持ちが残りました。
でも「アントニオ猪木をさがして」というタイトルが好きです、ぼくは。
ぼくとしては、新間寿さんの話も聞きたいけど、この映画では出てきません。
ということで、今日の午前中にYouTubeで新間寿さんの出てくる動画を探して見てました。
もうちょっと脂が抜けて、昔の話を思い出して面白そうに語れるようになるまで待たないといけないかな。その前に寿命が尽きるということもあるけど。
アントニオ猪木というのは、猪木寛治(これ本名)さんが作り上げた人格だなとぼくは思ってました。新間寿さんは、「猪木寛治と私が考えた行動をするのがアントニオ猪木」みたいなことを言ってました。
プロレスの闇がふつふつと湧いてくるような気分が再び味わえましたけど、あんなに面白かったプロレスは、アントニオ猪木の引退とともに消えました。
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