前回サンドローネ・ダツィエーリ作「パードレはそこにいる」の紹介をさせてもらいました。
その「パードレはそこにいる」から始まる3部作の第2部目、「死の天使ギルティネ」を「MOZU」を観る一方で読了しました。
主人公sは、緑色の瞳のイタリア ローマの美貌の警察官コロンバ・カセッリと、子供時代の長い期間誘拐され監禁されて精神的に深い障害を抱えている失踪人捜査専門のコンサルタントのダンテ・トッレの二人組です。
まだ第3部目の作品を読んで無いのですが、この二人は3部目も当然主役を張るでしょう。
そして、この作品を読まれるとお分かりになりますが、彼ら二人はこの「死の天使ギルティネ」で扱う事件をなんとかするのですが、ダンテの過去、少年時に監禁されていた事はただの単発的な犯罪では無く、もっと大きな国際的陰謀に繋がっていく予感を漂わせつつ、その二人にとって根源的な謎の解明に向かって、次回作に突入していくのであります。
そう言う事で、次回作の「パードレはもういない」は、とっくに翻訳されて早川から出版されているので、自動的にその作品に手を伸ばさざるを得ないのであります。
そのためにも本作は読まざるを得ず、また当たり前のことですが、この3部作は順番通りに読まねばなりません。
で、本作品の紹介をしたくてたまらないのですが、第1作の「パードレはそこにいる」のネタバレにならないように気をつけながらの紹介にしなければならず、これはかなり難しいのです。
コロンバとダンテ
コロンバ・カセッリ
コロンバは、前作で「機動隊副隊長 休職中」となってましたが、本作では「休職中」と言うのがとれています。
前作の事件解決後、復職しています。
なお「機動隊」と言うのは、日本のとは違って、殺人事件やテロ事件を扱う警察ということのようです。
緑色の瞳の美人刑事で、結構荒っぽいことも得意です。
イタリアの小説らしいと思えば良いのか、今回、はじめの方からコロンバの「女」の部分が出てきます。
とんでもない現場から疲労困憊で自分のアパートに戻ってきたコロンバは、関係を切った恋人を思い出して性欲を感じます。
やがて、その男がコロンバのアパートを訪ねてきて、ほぼそういう場面になり、実際始まりそうになりますが、急にコロンバはその男の不誠実さを思い出し、叩き出します。
また、なんとなく好感を抱いていた対テロ作戦部隊の警視が、コロンバに協力してくれるのですが、最後に起こる事件現場に向かう列車のトイレで「狂おしいほどの欲望の炎に包まれて」オーガズムに達したりするのです。
でも、そういうことはそういうことで、さっさとコロンバは戦闘態勢に入り、敵と戦います。
なんか、日常的な食事の場面を描写するように、そういうセクシャルな部分があっさり当たり前のように描かれます。全く官能小説的な雰囲気はありません。
彼女は、この作品では33歳になっています。
事件に対しては、彼女は自らの信念に基づいて暴走します。
ま、暴走してくれるので、この小説が成り立つのですが。
ダンテ・トッレ
前作の紹介の時も書きましたが、彼は六歳の時に誘拐されて、11年間囚われ、コンクリートのサイロに閉じ込められていました。
ある日、隙を見て逃げたのです。
11年間の幽閉生活は、当然ダンテの精神に影響を与えています。
閉所恐怖症です。そして、対社会的なことは得意ではありません。
しかしダンテは高い知性と優れた観察能力を持ち、失踪人捜索のエキスパートとして多くの誘拐事件を解決しています。
自分に対する監禁については、ただの誘拐監禁事件では無くて、人間の改造という目的のある組織的なものだとダンテは考えています。
自分の記憶も作られてものだということは、前作で明らかになっています。
自分は誰なのか、ダンテは「本当の真実」を追い求めようと考えています。
二人の関係
前作の後、二人は連絡を取り合ってはいません。
前作でコロンバは32歳でしたから、もう1年が経過しています。
ダンテは、コロンバに慕情を抱いています。
今回、列車1車両の乗客が全員死ぬ事件が起きました。
駅から連絡を受けて現場に急行した警官がコロンバだったのです。
イスラム過激派のテロ声明が出ますが、コロンバはこれがただのテロでは無いと思いました。
周りがみんなテロだと考えている中、この事件に取り組むには、あの変わり者のダンテの協力が要る。
そう考えて、コロンバは、またもダンテを事件に引き摺り込むのです。
コロンバを好きなダンテ。でも自分の気持ちをぶつけることはしない。一方でコロンバが対テロ作戦部隊の警視に惹かれているのに気付きます。もちろんコロンバが彼とそういう関係を持ったことも気が付きます。
そうなんです。このシリーズは、コロンバとダンテの関係も縦糸として描かれています。次回作でどうなって行くのでしょうか。
今回の内容は
深夜のローマに、ミラノ発の急行列車が到着した。しかし、先頭車両からは誰も降りてこない。車掌は車両を見に行き、その後車両から出てきて連絡通路のデッキにうずくまります。そのまま彼は命を終えるのです。
車掌の死体を発見した鉄道警察は、すぐに司法警察に連絡します。
現場にやってきたのは機動隊第三課の、気分によって色合いの変わる緑色の目のコロンバ・カセッリ。
という始まりです。
昔、人間を改造する実験が行われ、その施設で誕生した殺人マシンの少女、それが死の天使ギルティネです。
彼女によって行われる連続殺人。
彼女の存在に気がついたのは、コロンバによってこの事件にまきこまれてしまったダンテ・トッレただ一人だけ。
そしてダンテ自身の過去と、殺人マシンの少女を生んだ施設とは、なんらかのつながりがあるのではないかとダンテは考えます。
コロンバでさえダンテの考えを完全には信じられないのですが、二人は本当の真実を求めて、誰の協力も得られないまま暴走を続けます。
そして、とうとうギルティネの最後の犯行現場に突入します。
なんと、この事件は解決するのですが、最後の最後で次回作を読まねばならない状況に読者は追い込まれてしまいます。
はい、次回作「パードレはもういない」を読まざるを得ないのです。
大変ですねえ。
今回のはミステリーアクションと言うよりもスリルとサスペンスの冒険小説に近いですかね。
前回、ジェフェリー・ディーヴァーの書く、リンカーン・ライムとアメリア・サックスのコンビのシリーズを思い出しましたが、この作品も、いかにもジェフェリー・ディーヴァーが書きそうな感じです。