美人の警察官と、肉体的に弱みのある抜きん出た知性の持ち主とのコンビというと、元モデルの美しい赤毛の巡査アメリア・サックスと、体の麻痺でベッドから動けない名探偵リンカーン・ライムとのコンビを思い出します。
ジェフェリー・ディーヴァーの書く「ボーン・コレクター」から始まるシリーズですね。
映画にもなっています、と言うか、ぼくは映画を先に見ています。
デンゼル・ワシントン演じるリンカーン・ライムを受け入れてしまっているので、原作を読んでリンカーン・ライムが白人らしいので衝撃を受けました。それに映画ではアメリア・サックスをアンジェリーナ・ジョリが演じていますが、原作を読んでいるうちに、もう少し綺麗な女性をイメージしたりしています。
まあ、そんなことはどうでも良いのですが、このイタリアのアクションミステリーにおいても、美人の警察官コロンバと閉所恐怖症等の精神的な弱みを持つ犯罪アドバイザーのダンテのコンビが活躍するのです。
実際、「上」を読んでいる途中で、ぼくはジェフェリー・ディーヴァーの書くアメリア・サックスとリンカーン・ライムのコンビを、ちょっと思い出しました。まあ、ただの与太話なので気にしないで下さい。
この「パードレはそこにいる」は、イタリヤの小説です。
はっきり言って、登場人物の名前など、当然ながらイタリアらしいもので、馴染みがなくて、67歳のジジイにはちょっと辛いです。
しかし、にもかかわらず、この作品は非常に面白かったのです。
主人公
男女2名の主人公が活躍するのですが、彼らは精神に問題を抱えています。
コロンバ・カセッリ 女性
本の登場人物の表に書かれているのは、「機動隊副隊長。休職中」というものです。
機動隊というのは、どうも日本の機動隊とは違うようです。
殺人事件やテロ犯を捜査する警官て感じでしょうか。
緑色の瞳の美人です。
三十二歳かな。
肩幅の広い筋肉質の身体、頬骨が高く貼った顔。コロンバは嫌が応にも人目を引いた。
戦士のような顔つきだと、かって恋人に言われたことがある。
と、いきなり書いてあります。
彼女の容姿については、あまり丁寧な描写はありませんが、とにかく美人だと書いてあります。
事件の解決のために、彼女が車の中で質問した相手は、答えているうちに首が痛くなったのです。彼女の顔を見るために不自然に首を曲げていたからです。そうまでして見ていたい顔なんだと書いてあります。
ただ、行動はかなり勇ましいです。
「休職中」というのが彼女の現状です。
パニックに襲われてしまうことがあります。
直前に担当した事件で、とてもひどい事が起こり、優秀で勇敢な警察官である彼女に、もう仕事を続けていられないほどの大きな精神的ダメージを与えたのです。
たくさんの人が死にました。
コロンバは退職を考えています。
ダンテ・トッレ 男性
六歳の時に誘拐されて、11年間囚われ、コンクリートのサイロに閉じ込められていました。
ある日、隙を見て逃げたのです。
そのサイロのある農場の所有者は自殺しました。
警察は、犯人が死んだとして捜査を終了しましたが、ダンテは自分を誘拐し閉じ込めていた犯人は別の人間だと主張しています。
11年間の幽閉生活は、当然ダンテの精神に影響を与えています。
閉所恐怖症です。そして、対社会的なことは得意ではありません。
しかしダンテは高い知性と優れた観察能力を持ち、失踪人捜索のエキスパートとして多くの誘拐事件を解決しています。
割れ鍋に綴じ蓋って感じのコンビが出来上がります。
主人公たちが巻き込まれた事件は
コロンバの直属の上司、機動隊隊長のローヴェレが、家に閉じこもっていた休職中のコロンバを呼び出します。
電話をかけてきて、外出を渋っている彼女に、迎えのパトカーを寄越します。
9月の初めです。
行き先は郊外。
両親と六歳の男の子がピクニックに行き、昼食後父親が昼寝をしている間に妻と息子がいなくなりました。
そして、警察は首を切り落とされた母親の遺体を発見します。
しかし、六歳の男の子の行方がわかりません。
殺人事件と誘拐事件です。
警察としては、父親を疑っています。
自分で奥さんを殺しておいて、失踪を申し立てているのだと。
担当検事と県警中央捜査本部(SIC)の副部長は、その線で父親を逮捕します。
しかし、ローヴェレは納得していません。
ただ、上がそういう意見なら、自分は大ぴらに動けないので、休職中のコロンバに誘拐された男の子を探すように言います。
自分の精神状態では、とても無理だし、退職も考えているコロンバですが、「無理です。一人じゃできません」なんて答えてしまいます。
ローヴェレは、その言葉を待っていました。
「ひょっとしたら協力してくれる人物がいるかもしれない」
はい、それがダンテ・トッレです。
コロンバは、ダンテのところに行き、事件捜査の協力を依頼する羽目となったのです。
事件に関わりたくない二人が、事件の解決のために大活躍をするのです。
タイトルの「パードレ」とは
パードレとは、お父さんというような意味です。
ダンテは、自分が囚われていた間、誘拐犯をパードレを呼んでいたのです。
そして、この事件の犯人は、昔、自分を誘拐した犯人と同一人物ではないのかとダンテは思います。もう爺さんになってはいますが。
そう、この事件はダンテの過去と関係があります。
さらに、コロンバの忌まわしい体験とも関係しているのです。
結構、孤立した戦いなんです
味方のはずの警察は、型破りな活躍をするコロンバとダンテに疑いの目を向けるようになってきました。
孤立無援となった二人は、警察に追われながら、独自に過去の事件を洗い直します。
そして、最後にたどり着いた真相は・・・
面白いですよ、この作品
下巻に入ってから、もうどんどんどんどん読まされていきました。
読むことを中断できません。
ヨーロッパのミステリーに、ジェフェリー・ディーヴァーなどのアメリカンミステリーアクションがミックスされている感じです。
深刻な弱みを抱えた主人公たち。
入念に作られたストーリー。裏切る展開。
スリルとサスペンス。そしてアクション。
思いがけない犯人。
今から再び読み返そうと思ってます。
この作品、どうも「パードレ3部作」らしいのです。
この「パードレはそこにいる」上下2巻
次の「死の天使ギルティネ」上下2巻
そして「パードレはもういない」上下2巻
もう、全部読んでやろうと考えてます。全部図書館にあることは知っています。
こんなに面白いのは、そうザラにはありません。