日本人は淡泊なんだなと思うことの一つが、小説。
「コウノトリの道」というのを読みました。
ジャン=クリストフ・グランジェ、ほら「クリムゾン・リバー」の作者ですね。フランス人だと思うんですけど。
「クリムゾン・リバー」は、ジャン・レノの出た映画を観ただけで、この作家の本を読むのは初めてです。
主人公はコウノトリの渡りを追って、東欧、中近東、アフリカなどの国々を旅して行きます。
春にヨーロッパへ飛来するはずのコウノトリが多数戻ってこなかった。なぜか、どこへ行くのかをコウノトリの渡りのルートに沿って調査してほしい。
鳥の研究家に依頼されたのです。
でも、旅の直前に依頼者は心臓発作で亡くなってしまいました。
スイスです。
主人公はフランス人。ひょんなことで紹介されて依頼を引き受けました。
金は経費も含めて、たっぷりもらっています。
依頼者がいなくなったので、金を返してやめようと思いました。
でも、現地の警部が、その依頼主に対して疑いを抱いていました。もしかしたらダイヤモンドの密輸でもしていたのでは無いか。
主人公に、金をもらっているならば、依頼通り仕事をしてはどうか、過程の中で秘密が明らかになっていくかもしれないし、自分は自分で調べてみるから協力して欲しいと、その警部は言いました。
さあ、幾つもの国を股にかけた主人公の冒険が始まります。
この作品は、グランジェの小説としての処女作だと解説にありました。
小説を書く前は、ルポルタージュライターだったのです。
そのせいか、いく先々の国の風土や人、社会情勢などがしっかり書かれています。
これがぼくには辛かった。
始めの頃に、この作品を放り出そうとしました。面白くなるまで時間も掛かるのです。
この辺りを我慢してじっくり読んでいくのが、白人のねちっこさなんでしょうか。
実は、この本を放り出しても、もう一冊図書館から借りてきているのも同じ作家の作品です。
せっかく広げたのだから読み続けようか。
でも、謎への挑戦だし、進行に合わせていろんな情報が提示されるし、行く先で人が殺されるし、挙句に現地の情報や民族の情報が詰め込まれるので、これはしっかり読まないとダメだし、ということでノートを取りながら読み進めることにしたのです。
ノート取りながら小説読むのは初めて。
ぼくが歳を取ったということなんでしょうね。
でも、そのおかげでしっかりついて行けました。時間かかったけど。
だって、東欧の街の様子とともに、ジプシーについての理解も得ながら、人が殺されて、その調査もしながら、現地でのコウノトリの観察をして、挙句に殺し屋に追われて、すぐに次の場所に移動して、イスラエルに船で渡って、そこの風土と社会情勢、アラブとユダヤの戦い、そしてキブツの説明と、さらに現地でのコウノトリの観察、やがてアフリカのジャングルを進むのですから。
ノートとってたおかげで混乱せずに最後まで行き着いたのです。
アクションシーンもしっかり描かれています。
扱っている犯罪が、嫌な気分にさせるものということが大きいのですが、あんまり後味が良い話ではありませんでした。
最後の謎が解け切ったときに、けっこうオエってなりますよ。
謎と冒険、暴力とセックス。
これだけ見ると、中学生の頃、夢中になって読んでいたシリーズを思い出しますね。
007。
でも、あっちは「大人のお伽話」と作者自ら定義してましたが、こっちは重たく暗いのです。
主人公は論文を書き上げ歴史学の博士号を取ったばかりの32歳。
両親は亡くなっているけども、リッチな養父母のおかげで何不自由無い生活を送り、今、パリの高級アパルトマンに一人で住んでいます。しばらく学問のことは忘れようと、自ら行動して生きている実感が欲しいという高級国民。
たぶん、手荒なことは不得意なんだろうという気がするでしょう。
しかし、やればできる。暴力も得意なんです。
行く先の女どもも、さっさと抱いたりします。
それなら明るくアクション物のヒーローになれよ。
そう思いますが、なんとなく過去の謎を引っ張ってたりして。
ということで、けっこう面白い話なんですが、これ映画化してるみたいだけど、その映画は観たくないな。
誰だ、フランスのスティーブン・キングだと言ったのは?
あ、面白いんですよ。