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「コウノトリの道」徹底解析3 派手にネタバレてます

ジャン=クリストフ・グランジェの小説処女作「コウノトリの道」のストーリー展開というかプロットというか、小説の骨組みをバラして仕掛けを調べましょうという狼藉目的で書いてます。

1、2は下記をクリックして下さい。

なお、長文御免です。

 

 

4・森の奥地 いよいよアフリカへ

中央アフリカ共和国に入国します。

マックス・ベームが、かって独裁者の下で働いていた国、主人公ルイ・アンティオッシュが家族と共に7歳まで住んでいた国。ルイの家族は、クーデターのどさくさで牢から釈放された凶悪犯たちに殺され火事になり、ルイだけが辛うじて助かった国。

そして、良質のダイヤモンド鉱山のある国です。

 

 

アフリカでの目的 ダイヤ採掘会社の社長はオットー・キーファー

マックス・ベームはダイヤ採掘を任され、厳しく地元民を使ってました。彼が中央アフリカを離れた後は、残忍なオット・キーファーが、その跡を継いでいます。

このことは、過去のデュマ警部の調査で明らかになってファックスで報告を受けていました。

そして、アフリカに来る直前、デュマ警部に頼んで1969年から現在までのアフリカのダイヤ採掘場で働いていた管理責任者、技術者、学者全員のリストを手に入れてもらい、マックス・ベームとオットー・キーファーとニールス・ヴァンドッテンの三人がつるんでダイヤの密輸をしていることの、目星をつけていたのです。

 

アフリカでの目的は、このオットー・キーファーに会ってマックス・ベームの心臓移植のことを聞くことです。それにダイヤ密輸についても直接聞くつもりです。

 

オットー・キーファーはジャングルの奥地、ダイヤモンドの採掘場近くにいるらしいです。

 

行動の持って行き方

さすがにここまで来ると、読者もかなり全容を把握しつつありますので、早く先に進んでくれという状況に落とし込まれてます。

 

アフリカでは、かなり都合の良すぎる展開となります。それでも読者は気にしない状態になっていることを作者はわかっています。

ただ、作者は時間の経過と話の進み方については、しっかりと説明がつくように気を配っています。

 

ダイヤ採掘会社に行き、自分はジャーナリストだと偽って、ピグミーのルポを計画しているのでダイヤモンド採掘場近くのピグミーの居住地域に行くのに便宜をはかってもらえないかと頼みます。

 

この辺は、小説を書く前はルポライターだった作者の経験が生きているのでしょうか。

アフリカで、白人同士というのは妙な連帯感があり、親切にしてもらえるみたいなことを書いています。

車とガイドを会社から出してもらえることになりました。

 

ここで、また作者の工夫です。

ジャングルに入るには許可証がいるのです。この日が土曜日で、どんなに早くても許可証は月曜まではもらえません。

出発前に日曜日丸一日以上時間ができました。

 

 

手に入れたい情報 マックス・ベームの心臓移植手術について

どうやらマックス・ベームの心臓移植はアフリカでされたのではないかということが推察されます。

これに関しての情報を手に入れたい。

 

現地に来たので、マックス・ベームに関する情報を探しましょう。

この調査を移動の許可証入手までの時間で、ある程度してしまおうという都合良さ。

 

現地の医療施設の情報

主人公は、会社から出るときにガイド役のガブリエルに、マックス・ベームとオットー・キーファーのことを聞きます。

ガブリエルは、自分は知らないけども父親が、明朝街に来ると言います。彼の父親はマックス・ベームのガイドをしてました。

 

以下は、役所が休みの日曜日の出来事です。

 

都合のいい展開と現金のおかげで、朝、主人公はガブリエルの父親ムコンタから話を聞けました。

で、さらに都合のいい展開と現金のおかげで、心臓が不調なマックス・ベームがかかっていた病院に行き、ベーム一家に関する書類を見ることが出来ました。

 

そしてマックス・ベームの行方不明の息子は中央アフリカで死んでいて、その検死報告も見ることができました。死因はゴリラに襲われたとあります。

どうもベームの息子の死体も心臓を抜き取られているようです。検死報告をした医師ムディアイエの名前も知りました。ムバイキという所に住んでいます。

 

 

ジャングルへ向かう途中でムディアイエ医師を脅す

月曜に移動の許可証を入手し、ガイドのガブリエルと共にジャングルの入り口まで、車で走ります。

途中、ムバイキを通るので、ここでムディアイエ医師に会います。ベームの息子の検死をした男です。

手荒く脅しました。

マックス・ベームの息子の死体のことを正直に語らせます。やはり、胸の辺りの傷口は綺麗で外科的な処置がされていました。そして心臓は抜き取られていたのです。

 

 

ジャングルに入ります

ここからは徒歩となります。

ガブリエルのいとこのベケスがガイドになります。

ガブリエルは一週間後に車で迎えに来るということで、帰ります。

 

荷物運びにピグミーが五人。中の一人は、ハッとするほど美しいバカ族の娘ティナ。

はい、作者はサービスを忘れません。

 

ピグミーの野営地ゾコ

当初、ピグミーのルポのための目的地と言ったゾコに到着します。

 

到着した夜、主人公は葬式に遭遇します。

村の娘ゴムヌが、ゴリラに襲われて亡くなったのです。

 

ゴムヌの死体を発見した男は言います。

「あいつ(ゴリラのこと)はゴムヌの手足をバラバラにした。目の前にあるもの全てを、なぎ倒して行くんです。木々も蔓も大地も」

 

はい、ブルガリアのラジコ・ニコリッチの死体を発見したときの、現場の描写を思い出しましょう。

 

主人公ルイは、ゴムヌも心臓を抜き取られたのだと確信します。

そして、殺人、あるいは心臓摘出の際に、ヘリコプターが使われたのだと。

 

シスター・パスカルの診療所

このゾコには、ヨーロッパの教会から来ている伝道者シスター・パスカルがいます。

彼女は医者でもあります。ピグミーに医療を施しています。

 

主人公ルイは、シスター・パスカルのところへ行き、ゴムヌは心臓を摘出するために殺されたのだと言います。

そして、埋葬された死体を掘り起こして調べて欲しいと言います。

二人で墓を暴いた結果、ゴムヌは外科的な処置により心臓が抜き取られていることを突き止めます。

 

当然、抜き取られた心臓は、心臓移植に使うのでしょう。

 

で、次の疑問。

犯人たちは、いかにして被害者を選んだのか?

 

小説の中に「HLAグループ」という単語が出ました。組織適合グループのことです。

移植のためには、患者に適合するHLAグループの体が必要です。

これを、どのようにして把握していたのか。

 

診療所の秘密

ここに至って、シスター・パスカルには思い当たることがありました。

この診療所は、貧しい予算でアフリカに設置したものではありません。

ここは<統一世界>という組織が、最新鋭の設備と薬品を提供している施設なのです。

そして、ピグミーたちの検体を採取して、分析し、統一世界の本部に結果を送り、必要な薬品を届けてもらっています。

分析は、分析器によってなされ、シスターたちはその分析の内容を知りません。

 

このようにして、<統一世界>はピグミーたちの一人一人のデータを手に入れています。

そうです、ここは<統一世界>の臓器移植用の牧場、人体ストックなのです。

時々、必要な心臓を持ったピグミーが亡くなるのです。

 

 

オットー・キーファー

さあ、いよいよ主人公は、朝4時に、この野営地を出て、オットー・キーファーのいるダイヤモンド鉱山へ向かいます。

しかし、キーファーはいません。

オットー・キーファーはエイズにかかってました。

彼は、身の回りの世話をする女と、20キロ離れた所にいるとのことです。

 

主人公は10時間歩きます。

そして夜になり、ようやくオットー・キーファーのいる家のそばに着くのです。

この辺りは、コウノトリの棲息地です。

今夜は、ここで泊まります。

主人公は、その夜、一緒に旅してきた料理係のハッとするほど美しいバカ族の娘、ティナを抱きます。

このベッドシーンは、ストーリーに全く関係ありませんが、割合丁寧に描かれます。

作者は手を抜きません。

 

 

翌朝6時。

主人公ルイは、テープレコーダーと拳銃を持って、一人でオットー・キーファーの家に行きます。

キーファーは、もう数日の命です。

話が済んだら、その拳銃で撃ち殺してくれることを条件に、オットー・キーファーは語るのです。

 

 

オットー・キーファーの話

マックス・ベームは、新しいダイヤモンド鉱脈を発見し、その確認のためにマックス・ベーム、彼の息子フィリップ、オットー・キーファー、そして地質学者のヴァン・ドッテンの四人が現地に行った。

何日もかけて調査をすると、鉱脈には質の良いダイヤがぎっしり。

 

しかし、この時、電報が届き、マックス・ベームの妻がスイスで亡くなったと知らせてきた。

前から心臓が悪かったマックス・ベームは、この知らせを読んで倒れてしまった。

 

諦めるしか無さそうだったが、意識の戻ったベームが、南のコンゴとの国境近くに知っている診療所があるので、そこに運んでくれという。

担架に乗せて6、7時間はこぶと、本当に立派な診療所がジャングルの中にあった。

そこにいた医者は、マックスと前から知り合いらしく、「何でもする」という条件で治療してくれることになった。

キーファーとドッテンは、マックス・ベームと彼の息子を残して、席を外した。

 

夜中に医者が出てきて、マックスは危機を脱したと告げた。

しかし、息子のフィリップは心臓を失い亡くなった。

医者は、キーファーたちに息子の死体をムバンキまで運び、正式の死亡報告書をでっち上げろと命令した。

白人の三人は、医者の操り人形と化した。

マックス・ベームの新しい心臓にはチタン製のキャップが取り付けられ、それがこの事の証拠物件になると言われた。

 

ダイヤモンドの横流しコウノトリを使った密輸が始まった。

しかし、その儲けは、あの医者に入って行く。

 

マックス・ベームだけがコウノトリの巣や足環の番号を知っている。彼が亡くなったらダイヤの密輸も終わりだ。

 

 

オットー・キーファーの話が終わり、主人公は彼を撃ち殺します。

 

 

 

 

そして主人公の秘密と解決が

オットー・キーファーの告白により、ダイヤモンドの密輸とマックス・ベームの心臓移植のことが明らかになりました。

主人公ルイは、9月の末にパリに戻ります。

 

そして、主人公の意識の奥深くに埋められた主人公の秘密の解明と、最終的な結末が、

5・地獄の秋

6・カルカッタ、その後、そして終結

で、語られるのです。

 

それはまた、徹底解析4にて