70代の真実

70代年金生活者の生活と思ってること、その他思がけないことも

「名探偵と海の悪魔」スチュアート・タートン ネタバレ無し

ようやっと読み終わりました。

この作品は海洋冒険ミステリーって言うのでしょうか、面白いです。

面白いのに、なんで読むのに時間が掛かったのかっていうと、なんちゅうか、読みづらいのです。

それでも面白い。映画的というか映画化を意識しているのかな。

 

面白いのに、読みづらい理由は

まず、登場人物は17世紀のヨーロッパ人。名前に馴染みが薄く、人物の認識がややこしい。

例えば、コルネリス・フォスという人とファン・スコーテンという人がいて、途中でフォスは殺されるのですが、ぼくはしばらくファンが殺されたと誤認識してました。その他の人たちも、フルネームではなく名前の一部を表示されると、わからなくなってしまったりします。

ぼくが年寄りだからなのですけど、英米の人物の名前よりは難しいですよ。

なお、ファンがつく名前は、他にも2人います。

 

そして、もう一つ、翻訳の人は工夫して欲しいというか、そういう部分もあります。

「愚物」とか「病者」とかの単語が出ます。

「病者」は、悪魔の手先のような、ブーギーマンのような存在です。病人ではありません。読んでいる途中で、これ「ill なんとか」例えば、ill manとかの訳なのかなと思ったのですが。ill は病気じゃなくて邪悪なとかいう意味で使っているんじゃないかなと。

「愚物」は、バタヴィアからオランダに向かう船に積み込んだ何か値打ちのあるものです。これも「愚物」と漢字で書かれると、イメージが狂っちゃいます。

翻訳者の方も、何か工夫していただけると楽に読めたのですが。

こういう読みづらさは、作品自体が面白いので、もったいないなと思うんですよ。

 

どんな話なのか

ネタバレが無いように、ちょっと表紙の裏の文章を引用してみましょう。

時は17世紀、

大海原を進む帆船で起こる怪事件。

囚われの名探偵に代わり、

屈強な助手と貴婦人が謎を追う。

すべては悪魔の呪いか、あるいはーーー?

なんか、そそるでしょ。

 

ちょいと前提知識

バタヴィアという地名を知ってますか? これ、インドネシアジャカルタの昔の名前です。

オランダの東洋進出の、一つの重要ポイントでした。

17世紀のオランダの東洋進出は、ご存知のようにオランダ国家によるものでは無く、オランダ東インド会社によるものでした。

会社ですから取締役会が仕切って増して、これを「17人委員会」というのです。

しかし、会社と言っても、軍隊を持ってますし、他国と戦争をしたりもできたのです。

 

探偵は牢にいる

この話、バタヴィアの総督ヤン・ハーンが家族や愛人を連れて船に乗り、バタヴィアからオランダへ向かうところから話が始まります。

総督は、オランダ東インド会社の業務にとって非常に価値のある「愚物」を一緒に運びます。この「愚物」を持って帰れば、総督はオランダ東インド会社の17人委員会(役員会)の一員になれるでしょう。それくらい値打ちのあるものなのです。

 

さて、サミー・ピップスというたいへん有名な名探偵がいます。

バタヴィアで「愚物」が盗まれるという事件が起こり、オランダからサミー・ピップスが招かれて、この事件を解決して愚物を取り返してくれました。そのおかげで、オランダに向かう船で愚物を運ぶことができるのです。

しかし、この船に一緒に乗せられるサミー・ピップスは、どういう訳か、罪人として、囚人として拘束されています。

船の中では牢屋に閉じ込められるのです。

 

で、みんなが船に乗り込むときに、包帯で顔を覆った怪人が現れ、「この船は呪われている、乗客は破滅を迎えるだろう」と叫んで、そして直後、男は炎に包まれて死にます。

そして船が出港するときに、張られた帆に、悪魔<トム翁(オールド・トム)>の印が浮かび上がったのです。

不思議な凶兆は、次々と船に現れます。

 

わきおこる謎また謎。

しかし、名探偵は牢に拘束され、謎を解くことが許されません。

サミーの助手にして屈強な元兵士のアレントは、頭脳明晰な総督夫人サラと共に捜査を開始します。

しかし、鍵のかかった密室で殺人が!

 

海洋冒険活劇のミステリー、怪奇小説もね

この作品、まさしく海洋冒険活劇なのです。血湧き肉踊ったりしちゃいますか。

そして怪奇小説

そこにミステリーが加味されます。

ロマンスもありの、なかなか欲張りながら成功している。

 

悪魔との契約とか出てきます。

 

ミステリーという勿れ

名探偵が出るミステリーというと、本格推理小説みたいな気がするでしょ。

でも、これ今風のミステリーなんです。

今風のミステリーって何?

 

ぼく、それほどミステリーの謎解きって重要だと思ってません。

だって、過去からの推理小説の名作に出てくるトリックって、実際、現実味薄いでしょ。

そういうのにこだわってミステリーを評価するって、どうなのかなと思ってます。

 

ぼくは気に入りました

実は主人公のアレントの手首には傷跡があり、それは出航のために張られた帆に描かれた悪魔の印と同じものなのです。

思い出せないアレントの子供の頃の記憶。

船で起こる数々の謎を解いていくと共に、彼の無くした記憶も解き明かされていくのです。

 

上手で面白い作品です。

これを原作にしてディズニーあたりが映画を作ったら、とても面白いものができるでしょう。