70代の真実

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「コウノトリの道」徹底解析1 派手にネタバレしてます

ジャン=クリストフ・グランジェの「コウノトリの道」読みましたというブログ記事を先日投稿したばかりです。

すいませんねえと形だけ謝って、すぐにこんな事を書いています。

当初から、こちらの方を書きたかったのですが、ネタバレなので、ちょっと遠慮したのです。

ネタバレが困る方はスルーして下さい。好き勝手に書いてますので(って、いつもだけど)。

正直、ノート取りながら読んだもので、そのノートの再編成をする目的で書いてます。

 

もとより、読書感想、あるいは紹介はアクセス数が少ないと知った上での狼藉です。

長いっすよ。

 

 

コウノトリの道」分析しましょう

前も書いたように、ちょっとこの小説、どうかなと思うところがあります。

しかしながら、後に「クリムゾン・リバー」で世界的なベストセラー作家となった人の書いたものです。

この小説が気に入らなくても、同じ骨組みで他の気に入った作家が書いてくれれば、かなり気にいると思います。

要するに、骨組みはちゃんとしています。

 

 

この作品のストーリーの筋

大きく3つの筋が絡まりあって、話は進んでいきます。

  1. ダイヤモンドの密輸組織とその方法の調査
  2. 移植するための心臓を抜き取る殺人組織の解明
  3. 主人公の過去への旅、忘れていたものを手に入れるために

 

1・ダイヤモンドの密輸組織とその方法の調査

中央アフリカ共和国という架空の国があります。この国からは非常に質の良いダイアモンドが出ます。

もしかすると、この国のダイヤモンド採掘現場からダイヤモンドが盗まれて、それがヨーロッパへ運ばれるルートが存在するのでは無いか?

そして、小説の冒頭に、コウノトリの渡りを追って調査してくれと主人公に依頼したスイス人、マックス・ベームがそのダイヤモンド密輸に深く関わっているのでは無いか?

コウノトリは、何か関係しているのか?

 

2・移植するための心臓を抜き取る殺人組織の解明

主人公は、スイスを振り出しに、東欧、中近東、イスラエル、アフリカと旅をして行きます。

行く先々で殺人に出くわします。

同じように変わった死体が、行く先々に転がっています。

動物に喰われたようなぐちゃぐちゃの死体。そして心臓が抜き取られています。そこだけは、動脈静脈がきれいに切断され、体の切り口も外科手術用の道具を使ったようです。

 

実は、主人公に調査を依頼したマックス・ベームは、冒頭に心臓発作で自然死しています。検死した医者は、過去に心臓移植を受けている事、そして不思議にもその心臓の端にチタン製のキャップが付いていると言うのです。

マックス・ベームがスイスでかかっていた病院では、彼に心臓移植の手術を施した記録はありませんし、移植者は定期的に診察を受けなければなりませんが、そのような診察をしていた病院は無いのです。

 

3・主人公の過去への旅、忘れていたものを手に入れるために

主人公の名前は、ルイ・アンティオッシュ。フランス人です。一人称で書かれた小説なので「ぼく」と表示されます。

彼の手はひどい火傷の跡が残っています。手には感覚がありません。そして指紋すら残っていません。

 

7歳の時、両親と兄が火事で亡くなっています。中央アフリカ共和国での事です。

自分は手にひどい火傷を負いましたが、なんとか一人だけ逃げてフランス大使館に行きました。

大使館には、両親と以前からの友人であったブラスレル夫妻がいて、ルイを保護してくれました。

頼れる親戚もおらず、ブラスレル夫妻は、ルイを養子として育ててくれました。

養父母はブルジョアです。ルイとの接触は少なかったのですが、金銭は惜しみなく使ってくれて、ルイは現在32歳で、パリに高級アパルトマンを買ってもらい、そこに一人で暮らしています。

仕事は特にする必要もなく十年かけた論文で、歴史学の博士号を取ったばかりです。しばらく、気分転換でもしようかという優雅な身分。

 

しかし、彼は家族を奪った火事のことや父親のことを思い出そうとすると、強い精神的なストレスに襲われてしまい、その事を避けるのです。

ですから、自分の手のことを誰かから聞かれると、いつも適当な嘘を言うのです。

そんな彼が、この冒険を通じてついに自分の家族のことを思い出して行きます。

この冒険は、そう言う彼の心の旅でもあります。

思い出した時に、彼は再び危険な旅に出て、決着をつけるのです。

 

 

イントロダクション ルイがこの冒険を始めた経緯

 

コウノトリと共に2万キロ、2ヶ月ほどの旅に

しばらく学問から離れて、自ら行動して生きる実感が欲しいと思っている主人公ルイに、養父母が御誂え向きの仕事を紹介してくれました。

 

コウノトリは渡り鳥です。夏の終わりにアフリカに向かって旅立ち、そして再び戻ってきます。

スイス在住のマックス・ベームは、鳥の研究者です。

他の研究者と協力して、コウノトリの観察をしています。

怪我をしたりして保護したコウノトリには、足冠を取り付けて個体の特定ができるようにしています。

しかし、今年、東ルートを飛んでくるはずの足冠をつけたコウノトリが戻ってきません。

何があったのか。

マックス・ベームは、ルイを紹介され、この調査にうってつけだと思います。

 

ベームはもう60歳を超えて、この2ヶ月ほどの旅は無理なのです。しかも心臓の具合も良くはありません。

ルイに必要な説明をして、報酬と必要経費、その他切符やクーポンなどを気前よくルイに渡します。

そして、出発の直前に、もう一度会おうと約束します。

さあ、ルイは出発の準備をして、フランスからスイスのマックス・ベームのもとを訪ねます。

 

しかし、姿の見えないベームを探したルイが見つけたのは、コウノトリの巨大な巣を見に行って、梯子の天辺で心臓麻痺を起こしてコウノトリの巣に転宅したベームの死体でした。

ここは、亡くなって2日ほど経過したベームの死体をコウノトリがつついて食べていたと言うショッキングな死体の描写が、これから先の冒険を暗示しています。

 

依頼された仕事を中止するでしょ普通

亡くなった依頼主との約束を守り・・・と言うパターンは、この場合、不自然ですね。この依頼の前は付き合いが無かったのですから。

作者は、工夫します。

 

謎の提供1

発見者である主人公は、検死に付き合わされます。

スイス警察のデュマ警部というのが来ました。

検死したヴァレルという女医が出てきて説明を始めます。

心臓発作。ベームは心臓移植の手術を受けていた。

ただ「ひとつ問題があって」とヴァレル医師はデュマ警部に言います。

 

検死の場から解放され、ルイは後が面倒そうな気がして、マックス・ベームの家から自分に関する書類を取り戻そうと考えます。ついでに金も全部返してしまおう。

ベームの家に侵入し、自分の書類を取り戻し、コウノトリ関連の資料を取ります。誰もいないので金を返すことはしませんでした。

そして、大きな封筒が3つ隠してあるのを見つけ、これも持って家を出ました。

車の中でこの封筒を見ると、たくさんの人間が解体されている写真がありました。

 

謎の提供2 そして冒険への誘い

さて、デュマ警部は、上手にルイを探します。

警部はルイが関わりを持ちたくないのでついた嘘を見破っていたし、ルイがベームの家に侵入したこともわかっていました。

ただ、ベームの死には事件性がないし、ルイを咎めるつもりはありません。

 

しかし、デュマ警部はマックス・ベームの巨額の資産が、どのようにして築かれたのかについて疑いを持っています。

ベームは、ダイヤの密輸をしていたのではないか。

そして検死した女医は、ベームの移植された心臓に小さなチタンのキャップが縫い付けられていたことを不思議がっていたと言うのです。

デュマ警部は、もう少しマックス・ベームに関することを掘り下げて調べたいのです。

ルイも、マックス・ベームの過去について調べてみたい気持ちがありました。ベームは昔、中央アフリカ共和国にいたことがあるのです。

 

ルイはもらった金銭を返却したいのですが、それは全てマックス・ベーム個人の資産から出されているので、受け取る人がいません。

デュマ警部は提案します。

依頼を受けた調査旅行をしたらどうか。

東欧、中近東、アフリカを旅して、ベームの過去も遡れるし、デュマ警部はここに残りベームの財産や手術について調べるからと提案します。

 

このデュマ警部の介入が、ルイに冒険の扉を開けさせるのです。

 

この辺の、主人公が冒険へ飛び込んでいく経緯は、読者を納得させるために作者は工夫を見せていますね。

 

 

2に続きます