アガサ・クリスティ以前には、シャーロック・ホームズのコナン・ドイル、その前のエドガー・アラン・ポーをはじめ、数多の優れたミステリー作家がいたのはよくわかっています。
それでもね、ぼくはアガサ・クリスティの作品達の中に、彼女の後に書かれたミステリー小説の全てがあると思ってます。
彼女は、とても優れた作家(ミステリー作家としてだけでなく)であり、彼女の作品は、どれもこれも優れています。
ということで、ぼくはエルキュール・ポアロの活躍する長編作品だけでも全部読んでいこうと決めたのです。
これが最近ぼくがアガサ・クリスティの作品ばかり読んでいる理由です。
ということで、ポアロものの11作目「ABC殺人事件」を読み終えました。
1935?1936年の作品です。
ポアロのところに手紙が来ます。
頭がおかしい人からの手紙なんでしょうか?
「今月(6月)の21日にアンドーヴァー(地名です。英語での頭文字はA)で、何か起こるよ」
みたいな内容です。署名はABC。
この手紙が来てから、地名の頭文字のABC順に、それと同じ頭文字の苗字の人物が殺されていくのです。そして死体のそばには<ABC鉄道案内>が、その駅のページを開いたまま置いてあるのです。
アンドーヴァーでの被害者はアッシャー夫人。
いくつもの小説や、テレビドラマ、映画で似たような話を読んだり観たりした覚えがあるでしょう?
クリスティー以前にも、この類の話は書かれていたようです。
この作品は、その類の話の完成形であり、その後のこの類の話の原型となり、さらに本書の巻末の法月綸太郎氏の解説によれば、その後のサイコスリラーに多大の影響を与えているのです。
この本を読み出してすぐに、それに気がつきます。
そして、今まで読んだ連続殺人の小説のタイトルが頭に閃くんじゃないでしょか。
ぼくは、ジェフェリー・ディーヴァーが書いたリンカーン・ライムとアメリア・サックスが活躍する「ボーンコレクター」などのシリーズを思い出していました。
ポアロの活躍は、そばにいる友人のヘイスティングズ大尉の口から語られるのですが、「ヘイスティングズ大尉の記述ではない」というタイトルの章がいくつかあって、完全な三人称でヘイスティングズもポアロも見たり聞いたりできない場面の記述がされています。主にアレグザンダー・ボナパート・カストというストッキングの行商人の行動や心情が描かれます。
こういうあたりが、ジェフェリー・ディーヴァーの作品を思い出させるのかもしれません。
なお、ジェフェリー・ディーヴァーは、クリスティーよりだいぶ後に出現した作家です。
ぼくのアガサ・クリスティーの作品の紹介は、全くネタバレが無いように書いています。
このやり方だと、そのうち書くのが苦しくなってくるかもしれませんが、できるだけ内容に触れないように書いていきますので安心して読んでください。