子供の頃のように

自由と幸せ。好きなように散歩したり、本を読んだり、気ままな生活の日記です。twitter始めました。@edaywalk

「テスカトリポカ」って神様の名前です  ネタバレ無し

こりゃなんだ、と思いながらも夢中で読んでしまいました。

ソモス・ファミリア(俺たちは家族だ)!

2021年2月19日に初版発行されたこの作品、図書館から借りてきた本は2021年6月20日5版発行のものです。

この本の帯には、第34回山本周五郎賞受賞、第165回直木賞候補作と書かれていましたが、2021年上半期の受賞作となりました。

予約してからずいぶん待たされました。

7ページから553ページまである、けっこう分厚い本ですが、図書館で受け取ってから、一気読みしてしまいました。

 

 

メキシコでコカインビジネスを大きく行っているロス・カサソラスって一家は、カサソラ4兄弟が仕切ってました。

儲けも大きそうですが、やることもえげつない、強烈に残酷な暴力によってビジネスを行っているギャング団です。

しかしある日、カサソラスの潜伏してる邸宅に、米軍が中東での空爆に使用している大型ドローンが飛んできて500ポンドの爆弾を投下しました。

商売敵として対立しているドゴ・カルテルの仕業です。

カサソラ兄弟は家族ごと殺されました。

しかし、たった一人だけ、3男のバルミロ・カサソラ・バルデスだけは、なんとか逃げることができたのです。

 

粉(エル・ポルポ)というあだ名のバルミロは、家族の復讐を誓い、アメリカに逃げるだろうと考えている敵の裏をかき、南下してアルゼンチンからコンテナ船に乗り込みアフリカに密航します。そしてアフリカからアジアへと逃げました。

名を変えてインドネシアに潜伏しているうちに、バルミロは、ある日本人と知り合います。

何か秘密があるらしいこの日本人の身元を調べて、バルミロは大きな商売にたどり着き、ついに日本へとやってくるのです。

 

というような流れで、話は進んでいきます。

中南米の強烈に悪くて残酷な犯罪者が、日本に上陸して子供の臓器売買ビジネスを作り上げていく話です。

アステカの現地の宗教、神様の話とか、いちいち漢字にスペイン語のルビがふられたりとか、読みにくい状態ではありますし、話も変なので「なんだこれ」という気持ちが湧いてきます。それでも一気読みさせられちゃうんです。

 

あ、バルミロの「粉(エル・ポルポ)」という通り名は、殺す相手の肩などに液体窒素を噴射して凍らせ、叩き砕き、自分の体の一部が粉々に砕け散るのを本人に見させるというのが得意というか好きで、体のパーツを粉々にするから「粉」と呼ばれるんです。ひどいでしょ。

そんで、この人、アステカの神を信じ、生贄というかお供えを捧げるために、生きたまま相手の心臓をえぐり出し、ま、えぐった時点で相手は死んでますけど、その心臓を相手の顔に押し付け、そして首を切り落としたりするんです。これは残酷というより、純粋に宗教的な行為なんですけど。

 

そう、これは宗教的な作品だとも言えるかもしれませんね。

 

バルミロは、日本でファミリーを作っていきます。

必要なのは、家族の結びつきです。

ソモス・ファミリア(俺たちは家族だ)!

元々の人殺したちを集めて、バルミロはさらに彼らを訓練して強固な殺人ファミリーを作っていきます。

 

いろんなバックグラウンドを持つ人殺したちが集まってきます。

この過程がけっこう面白いのですが、なんとなく「これは知っている」という気持ちが湧いてきます。

昔読んだ北方謙三さんの作品というかシリーズで、田舎の港町にある酒場を中心に、いろんな男たちが一人一人集まってくるてのがありました。タイトルも思い出せませんけど、確か「キドニー」ってあだ名の医者が出てきました。登場する男たちの物語が、一つ一つの本になって、それが集まってシリーズになっています。

あの感じに似ています。

で、ふと気がついたのですけど、そういうのって「水滸伝」じゃありませんか。

そうか、北方謙三さんは、後に「水滸伝」を書きましたけど、あのシリーズって水滸伝なんだ。

てことは、これも水滸伝か?

 

ラストは、途中で想像した通りになりました。

 

バルミロは、最後に自分が、兄弟と家族を奪われ、メキシコを追われ、なんのためにこの極東の島国まで流れついたのかを理解します。

それは復讐のためではなく、アステカの神に出会うためだったのです。

 

 

バルミロは、冒頭からは出てきません。

土方コシモ(小霜)という、母親がメキシコからの密入国者で父親が指定暴力団幹部という少年の話が、母親が故郷のメキシコの小さな町を麻薬カルテルの目を盗み、なんとか脱出するあたりから語られるのです。

よくこんな話がすっと一気に読めたものです。作者である佐藤究の力量なのか、この作品の熱なのか。

やはり、面白い作品だからだということなのでしょうか。