ぼくは子供の頃から本を読むのが好きでした。
それも翻訳物をよく読んでいました。家に少年少女世界文学全集というのがあって、それを手当たり次第読み始め、中学になったらクリスティなどの推理小説を文庫本で買い漁って、ひたすら読み、それからハヤカワミステリで007シリーズとか、ハニー・ウェストシリーズなんかも友達と貸したり借りたりして読んでいたのです。
今でも、翻訳物は割合好きです。
ジャンルに関わりなく、早川書房などから出ている本を、タイトルや装丁の気に入ったものに手を出しています。
それぞれ本国で何かの賞を取ったり、ベストセラーになったりしたものを出しているのだろうと思いますが、出版社も翻訳に出す前に、すごくたくさんの作品を読んで、出版しようとする本を決めているのだろうと想像すると、さすがに大変だなあなんて、どうでもいい感心の仕方なんかしています。
さて、この「密林の夢」、表紙の絵が気に入って手に取りました。見開きで裏返してというか、表返してというか、両方続きで見ると、もっと良いです。なんかこんな柄のシャツ、アロハありそう。
タイトルも良いし。原題は「State of Wonder」で、これまた良いでしょう。
主人公は、大きな製薬会社で研究をしているマリーナ・シン。そう、お父さんはインドの人です。
この製薬会社は、画期的な新薬の研究のためにスェンソン博士という学者をブラジルの奥地に派遣しています。博士は、70代の女性。研究に没頭して、現在の研究の拠点、研究の状況などを会社には報告もせずに、長期間アマゾンの奥地に行ったきりです。多額の費用が掛かっています。
しびれを切らした会社は、スェンソン博士を捕まえて、研究の進捗状況を把握するようにエックマン博士に命じ、現地に派遣しています。
さて、このエックマン博士が現地で病死した旨の航空書簡が会社に届くところから、この話は始まります。
エックマン博士はマリーナと同じ研究室で働いていました。
会社の役員が、航空書簡をマリーナに見せて、一緒にエックマン博士の奥さんのところに知らせに行きます。
会社としては、どうしてもスェンソン博士を捕まえたいのです。博士の研究に賭けているところもあります。そして、マリーナは学生時代にスェンソン博士の教え子でした。
当然のように、マリーナにブラジルに行くように要求が出ます。
マリーナは、亡くなったエックマンの死の様子なども知りたくて、ブラジルへ飛びます。
かなり散々な旅の末に、マリーナはスェンソン博士の研究施設にたどり着きます。
冒険小説のような展開ですが、冒険小説ではありません。
じっとりと夢を見させられている気がします。
これ、読んだ直後に書きましたが、一晩置いて朝起きた時に、脈絡もなく「村上春樹」と頭に浮かびました。全然違うんですけれど。それにこの作家と比べると、醬油味で、あっさりしてるしね。じゃあ、なんで書いたのか、書きたくなることもあるのです。
その他、ぼくが名前を憶えられない南米の作家など頭にひらめきます。
「まあ、読んでみて」と言いたくなってしまうと、訳者あとがきにありますが、実際そうです。
かなりしつこくて濃くて体力がある文章で、アメリカの女性作家だなあと、しみじみ思い知らされます。
まあ、読んでみて下さい。