時々聞いている大竹まことのpodcastに、釧路から桜木紫乃がゲストで来ていました。
釧路と言えばと、大竹まことが若い頃釧路のキャバレーに仕事しに行って、休みの日にブルーボーイ(今で言うニューハーフ)とストリッパーと師匠と自分の4人で海を見に行ったという話をしました。
桜木紫乃は、その話で短編を一つ書けるとうれしそうに言うのですが、それを聞いて、なんとなくぼくは彼女の小説を読んでみたくなりました。
借りた本を図書館に返しに行ったついでに、小説の棚の「さ」のところに行き、彼女の本を一冊だけ選びました。
やはり「ホテルローヤル」か、それとも、と迷いましたが、装丁に惹かれて「ブルース」を掴みました。表紙開いたページの、ホテルのベッドの上に座り込んで、あっち向いてタバコ吸っている女の裸の背中の写真もちょっと良かったのです。
女の書く小説は油断できません。
ましてや新官能派とか性愛小説家とか言われている人ですから、どうかなと思っておりましたが、ドロドロ、グチョグチョ、ネチャネチャは、あまりしません。
文章自体は男のような感じがしました。
影山博人という男と、八人の女との短編が八つ。一作に女1人ずつですね。
八つの話が集まって、影山博人の物語になります。
札幌などが出てきますが、メイン舞台は釧路です。
釧路は「高台」と「下の町」がありました。「下の町」は崖と産業道路に挟まれた、泥水に流されそうな場所です。
その下の町の貧民窟に生まれた影山博人。男なしでは生きられない母から生まれ、父親はいません。
彼の手足の指は6本ずつあります。
中学の時に彼に抱かれた「高台」に住む同級生の女の話から始まります。
時々止むを得ず母を抱いていたと思われる彼は、女を抱くのは上手です。そして、そういう行為だけでなく、女の心に残る男なのでしょう。
影山博人は、自分の住む「下の町」の長屋に火を付け、下の町は無くなります。
金をもらって女を抱く、要するに彼は身体を売ったりし、やがて勤めた工場で、6本目の手の指を両方切断します。精神病院に入っていた母親が亡くなったのは、その頃です。
影山博人は謎めいた闇をまとい、裏社会で生きていきます。
ヤクザとか、そういう具体的な描写は出てきませんが、もしかしてチンピラ、あるいはその仕事の元締めなのか、実態がよく分かりません。そして、彼は札幌で拾った女と釧路に戻り、地元で有力者としてのし上がっていきます。
釧路ノワール。
面白いです。短編八つなので、それぞれに切りがよく、読みやすいです。
文章が男みたいだと言いましたが、ちょいと変えれば、北方謙三あたりが書きそうな気もしました。
昨日の午後から読み出して、10時過ぎには読み終えました。
ベッドで寝転んで読んでいたので、そのまま寝ました。
今朝、早く目が覚めて、そのままグダグダしてたら、突然気がつきました。
濃密なイマジネーション。
息が詰まりそうに密度が濃い妄想。
シェヘラザードが語ってくれたかもしれません。
女の書く小説は油断したらいけません。