70代の真実

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「ブルースRed」桜木紫乃 釧路ノワール続編

ぼくが、桜木紫乃さんの濃密な妄想「ブルース」を読んだのは、4年も前のことでした。

ブログって、便利ですね。

曖昧になっている自分の読書の履歴を、こうやって検索できるのですから。

 

釧路の貧民街で生まれた影山博人という6本指の男は、多くの女性を魅了し、裏社会をのし上がり、やがて釧路の街を裏から支配するようになります。そして彼は死んでいきます。まさしく「釧路ノワール」という呼び方がピッタリする前作「ブルース」は、不思議に面白かったのです。

 

 

「ブルースRed」は、その影山博人の「娘」莉菜の物語です。

前作同様に表紙が良いです。
で、その影山博人の「娘」莉菜は、父の代からの忠実な用心棒で、時にはいろんな始末を上手にする齊藤弥伊知(やいち)を運転手として、父の死後、釧路の街の陰を支配しています。

「娘」とカギカッコ付きで書くのは、彼女が影山博人の妻の連れ子だからです。

血は繋がっていませんが、父親に似ているのです。

 

影山博人は、松浦という男を道議員にして利用していました。

そして自分が死ぬ前に、その松浦の妻を抱き、自分の息子を残しました。もちろん、その子は松浦議員の息子として育てられましたが、成長に伴い本当の父親に似てきて、戸籍上の父親である松浦も本当の父親が誰なのかを理解しています。

その影山博人の息子武博は、将来的に中央政界に進出していくことを母親と影山博人の娘の莉菜に期待され愛され、その期待通りに成長していきます。

 

しかしながら、他の地方都市と同じように釧路の街は次第に力を失っていきます。

カゲヤマの支配する夜の繁華街も凋落していくのは当然です。

莉菜も老いていくのです。

 

本作は、前作と同様に、いくつかの短編が合わさって一つの物語になっています。

前作と同様に闇の世界でのことが描かれ、これまたノワール小説なのです。

 

この2部作、全くもって妄想、濃密な暗い妄想です。

表紙を開くと、その妄想はどろりと流れ出てきて、ページをめくるごとに読んでいるぼくを包み込みます。その濃さは、とても払い除けられるようなものではありませんでした。

桜木紫乃という作家の頭に浮かんでくる、よくもまあと言いたくなる妄想を読むのが、とても面白いのです。

あっという間に読んじゃった。