70代の真実

70代年金生活者の生活と思ってること、その他思がけないことも

「長い一日」滝口悠生作は、いろいろあった一日を語っているのでは無いのでした

今度はノートなんかとらなかったけど、やはり読むのに時間がかかってしまいました。

毎日少しずつ読んでいったのです。

この前、同じ作家、滝口悠生さんの「水平線」を読みましたが、続けてこっちも読んでしまいました。

2冊続けて読んだ後に、やはり滝口悠生さんの書いた「ラーメンカレー」を読むつもりだったのです。でも、同じ作家を何冊も続けるのは良くないかもしれないなという気がして、「ラーメンカレー」は少しお休みをした後に読むことにしましょう。

 

作者と同じ名前の滝口さんという作家は、奥さんと8年間住み続けた所を出て、新しい家に引っ越そうかと考えています。

もしかしたら、主人公の滝口という作家は、作者の滝口悠生さんなのでしょうか。

まあ、小説の中の滝口という人物は、実在の滝口悠生さんと同じ人物ではあり得ないのですけれどね。

 

この作品は、主人公夫婦の新しい家を探して引っ越していく話に絡んで、彼ら夫婦の友人たちの在り方というか生き方というか佇まいも描かれて、特にどうというストーリーでも無いのですが、読んでいると不思議に面白いというか、変なんだけど気に入ってしまいます。

 

滝口悠生さん、一つの場面を違う視点でそれぞれ書くのが好きですね。

前読んだ「水平線」でもそうだったんですけども。この作品でもちょっとだけ。

だから同じ話を視点の数だけ何度も読まされます。

そういうのが面白いのかもしれません。

客観的な視点じゃなくて主観的な視点でいきたいんでしょう。

三人称が途中からひらりと一人称になり、また三人称に戻るみたいなのも、主観的な視点が好きってことなのかな。

 

それと、登場人物それぞれの人生って言うか、生まれて、ずっと生きてきて、死んでいく、そういう人生の物悲しさてのも、こういう起伏の少ない話にも滲み出てくるんです。

 

 

どこかに、主人公は何かを見たらそれをどう文章にするかと考えてしまう、みたいなことが書いてありました。

あれ? それは「水平線」に書いてあったのかな。

いずれにせよ、作家は大変そうですね。

 

滝口悠生さんの文章は手数が多いです。

時々、何言ってんの、と思うことがありますが、この文章の中に浸り込むのは良い感じです。

作品の最後で、主人公の妻が布団の中から出たくなくて、締めの文章は、こう書かれています。

 子供の頃一緒に暮らしていた祖母は私に甘くて、今日は学校を休みたいと言うと父や母には怒られたが、祖母は学校に電話して熱があるから休む、と嘘をついてくれた。

私は今日は休む。

ぼくたち読者も、ずっと滝口悠生さんの文章の中でぐずぐずしていて、そこから出たくなくて「ぼくも今日は休む」と言ってしまいたくなります。

 

ま、老人は、って言うとライオンの夢を見ちゃいますが、毎日休んでいるんですけどね。