きっとどこか違うのでしょうけれど、ぼくには見分けのつかないユニフォーム同士の決勝戦は、しばらく見てると変な感じがしてパラリンピックの車椅子ラグビーの3位決定戦にチャンネルを変える晴天の8月29日です。
今日の空はこんな感じ。
雲はあるんですが、無いような気がする碧空。
明治維新のことを連続で書いている間にも、本を読んだりいろいろありました。
ゴッサムの神々
僕が読んだのは、表紙の絵が上とは違う創元推理文庫です。
作品の時代背景
1845年あたりのニューヨークが、この作品の舞台です。
その年に、ニューヨークに警察が初めて出来たのです。で、そのニューヨーク最初の警官の一人、ティモシー(ティム)・ワイルドってのが主人公です。
そして、この年、アイルランドでジャガイモの伝染病が流行り、ジャガイモの収穫ががた減りし食いつめたアイルランド農民が、たくさんアメリカに移民してきた、そんな時代です。
さて、宗教改革の話をちょっと挟みます
この「ゴッサムの神々」を読むのに、ちょっと知っておいた方が良いので、触れておきます。
キリスト教にはカトリックとプロテスタントがありますよね。ま、他にも色々なのですが。
このカトリックがヨーロッパに権威の根を張る過程も書きたいのですが、長くなるのでまたいずれ。
当時のヨーロッパにおけるカトリックの権威はすごく、カトリック教徒であることがまともな人間であるという状況で、破門なんかされてしまうと、もう市民生活すら出来ないような有り様でした。各国の王様たちも頭を下げるしかありません。
ある日、ルターさんという真面目なお坊さんが、聖書をよく読んで、ローマ教会(カトリック)の矛盾点に気づきます。ルターさんは、宗教革命なんて大それたことまでは意図してなかったのですが、宗教的な討論をしたかったのです。
ここで、時代背景として、活版印刷技術が発明されました。グーテンベルグでしたっけ。
これはものすごい事で、それまで教会のお坊さんしか読んでなかった聖書が、印刷されて一般の人たちも手に入るようになったのです。
で、せっかくだから、ラテン語ではなくて、ドイツ語とかみんなが読めるような言葉に翻訳され流通しました。
ルターさんの主張は、「聖書に帰ろう」という純粋なものです。
聖書が自分たちが理解できる言語で印刷され手に入れられるようになり、ルターさんに賛同したり影響されたりした坊さんたちが、中身を説いてくれるようになると、みんなは喜びますし、カトリックの教えに対して「あれ?」って感じにもなるんです。
教会じゃなくて、聖書に従おうなんて言われるし。
ルターさんは純粋なのですが、各国の王様の中には、できれば教会の言いなりじゃなくて、自分の好きなようにしたい人もいて、ルターさんの言うプロテスタントてのに改宗しちゃおうかな、なんて考えたりしました。
こう言うのが宗教改革です。
ザクっといい加減な説明ですけど。
とにかくカトリックには、ちょっと手放せないような権威権力利権があって、宗教改革てのは純粋な宗教上の問題ではありません。結構生臭いものなのです。
イングランドとかアイルランドとか
以前、処女王エリザベス1世の話をしましたが、彼女のお父さんが、別の女性と結婚したいから今の奥さんと離婚しようとして、ローマ教会がこれを認めなかったので、イギリスはカトリックをやめてプロテスタントに変わって、挙句に国の教会という組織にしちゃったのです。
でも、ガチガチのプロテスタントという訳ではなくて、そこが純粋なプロテスタントの人たちには不満だったのです。
その純粋な、厳しいプロテスタントの人たちをピューリタント(清教徒)なんて呼びます。
ピューリタントの人たちは、「もう、こんな甘いいい加減な信仰にはついていけない。私たちは私たちだけで純粋な信仰をしましょう」とか言って、みんなで船に乗り、あたらしい世界へ旅立ちました。
それがアメリカ合衆国の始まりです。ピルグリムファーザーなんて言いますね、彼らを。
で、ジャガイモの伝染病で困窮したアイルランドの人たちが、大挙してアメリカに移民してきたと上に書きましたが、彼ら、アイルランド人はカトリック教徒なのです。
この辺りが、アイルランド人がすんなりアメリカに入り込めなかった理由です。
小説「ゴッサムの神々」の話
本の裏表紙に書かれた紹介文の一部を引用します。
1945年、ニューヨーク。バーテンダーのティムは大火によって顔に火傷を負い、仕事と全財産を失う。
彼が新たに得た職は、創設まもないニューヨーク市警察の警官だった。
ある夜、彼は血まみれのネグリジェ姿の少女とぶつかる。「彼、切り刻まれちゃう」と口走った彼女の言葉通り、胴体を十字に切り裂かれた少年の死体が発見される。
少女は10歳の娼婦だった。
さらに彼女は、馬車に乗った黒頭巾の男が、いくつもの子供の遺体を街外れに埋めているという。
この証言に従い、警察は19もの胴体を切り裂かれた子供の遺体を発見する。
という事で、おどろおどろしいですが、当時の宗教対立、アイルランド系移民排斥、民主党と共和党の対立などを背景にスリルとサスペンスの、シャーロック・ホームズ物みたいな冒険サスペンス物語が展開されます。
文章も大変素晴らしく、時々読み飛ばしたくなるのですが、それはぼくに堪え性が無いだけで、多弁で比喩に富む、少し息苦しくなることもあり、はたまた、上記に説明したような事柄を理解していないと、「?」という気持ちにもなり、ちょっとめんど臭い作品だというと、間違った印象を与えそうでいけませんね。
とにかく面白い作品です。
ぼくは適当に読み飛ばしながら最後まで楽しみました。
読み終えて、所々丁寧に読み返してみると、「あ、そうか」と納得したりします。
この「ニューヨーク最初の警官」てのは、シリーズで、他にも作品があるらしいです。そのうち、それらを読んでみようかなという気持ちになっています。