ぼくは、ぼくで良かったなと時々思うのです。
割合、自分の人生が気に入っています。
あとは、どんなふうに死ぬのかの勝負です。
なんて思うのですが、ようやく届いたアベノマスクを見ながらしみじみした気持ちになってます。
先ほど自分のクローゼットの中が、まだ夏仕様になってないことを家内に叱られました。
以前より、気づかれない程度には冬物と夏物の入れ替えを行ってはいたのですよ。
しかし、あまりにも気付かれにくすぎる変化でしか無かったのです。
コートやズボン、ジャケットなどを二階に持って上がり、二往復もしたので汗が出てしまいました。
おかげで夏仕様。安心して季節を迎えることができます。
家内は疲れて休んでいます。
ぼくは、衣類の整理の際に、GUでアホらしいほど安い値段で買ったパジャマが出てきたので、ああ、今日の夜はこれを着ようと安心しました。化繊の長袖だけど、細かい穴がたくさんあって、今頃にはちょうど良さそうです。
寝室に置いてある座机に、「大きな字で書くこと」という加藤典洋先生の書いた本が乗っているのを見つけました。
加藤典洋氏については、ぼくは全く知りません。
おそらく家内が図書館で借りてきたのでしょう。
小さな四角い本です。
加藤典洋氏は、本の最後のページに拠れば、文芸評論家で早稲田大学の名誉教授。去年亡くなりました。
詩みたいなの(すいません詩です)が最初にあって、中身はエッセイぽい文章がいくつも載ってます。
拾い読みしました。
面白いです。
中に「斎藤くん」と言いうのがあって、大学時代の友人の斎藤くんのことが書かれています。
斎藤くんは、北海道の生まれ。背が高く、目が大きく、どこかエキゾチックな風貌をしている。あまり話さない。小さなアパートの三畳一間の部屋で、なかには小さな本棚が一つと座卓があるきり。飲む?と聞かれたので、うんと頷くと、コップに水を汲んできて座卓の上に置いた。
ってのが、なんとなく気に入りました。
部屋の小さな本棚にフランス語のサルトルの本が置いてあったとのこと。斎藤くんに小林秀雄のことを教えてもらったのだそうです。
1966年のことだと書いてあります。
大学を卒業した後、道で、背広にネクタイ姿の斎藤くんに出会ったのです。
着せ替え人形みたいにぎこちない。
靴の会社で営業をしていると言います。
大学院はどうしたの。あ、半年でやめた。そして以前同様、背が高いまま、柔和に笑っている。
短い文章で、最後は
いま、斎藤くんはどうしているかな。たまに、思い出す。
ぼくも大学の頃の友達のことを思い出しました。