70代の真実

70代年金生活者の生活と思ってること、その他思がけないことも

諸田玲子さんの「女だてら」読み終えました

前に、この本借りてきたって書きましたが、読み終えました。

と言うか、読み終えていましたが、読み終えてから数日経ってからの本の紹介であります。

女だてら (角川書店単行本)

女だてら (角川書店単行本)

 

 

ざくっとした内容(ネタバレ無しで)

これ秋月黒田家の御家騒動のお話なんです。

 

昨秋、お世継が急死しました。

殿様は、2月12日に参勤交代のために江戸に出発しました。

ところが、江戸に到着した殿様と連絡が取れなくなってしまったのです。

お世継ぎが決まってない状態なのです。

 

江戸の家来たちの造反というか、彼らは黒田家の本家(福岡黒田家)と結んで、自分たちに都合のいい者を殿様の養子として迎え、お世継ぎとして、幕府に認められたら、後はさっさと殿様を病死ということで殺してしまうつもりです。

殿様は、奸臣たちに囚われているのです。

 

このお家の一大事に、先の藩主(今の殿様の父親)の正妻 慈明院と国家老の一派は、慈明院の実家である土佐山内家から慈明院の甥を当代藩主の娘の婿養子に迎えて、これを世継ぎとしようと考えます。

 

大名家の話ですから、養子、婿養子、世継ぎの決定などは幕府の認可が必要なのです。

 

江戸の奸臣たちの都合の良いようにされる前に、手を打たねばなりません。

もちろん、本家黒田家側の厳しい妨害があります。

 

この慈明院の企てを実現するために、全国に名を知られた漢詩人、原古処の美貌の娘 原みちは、男装し自分の弟の名を名乗り、密書を携え京都そして江戸へと旅立つのです。

 

という冒険時代小説であります。

面白いのです。

NHKで連続の時代劇ドラマにして欲しいです。主役は、天海祐希をうんと若くして、だいぶ女性っぽく、綺麗にしたのをお願いします。あるいは、シシドカフカに色気をまぶしたのか。

 

 

黒田家、そして秋月藩とは

黒田官兵衛の流れ、黒田長政とか、江戸時代は九州福岡の大名です。

黒田節ですね、酒は飲め飲め・・・

 

この小説に出てくる秋月黒田家とは、この福岡の黒田家の分家です。

Wikipediaから引用します。

秋月藩(あきづきはん)は、福岡藩支藩。元和9年(1623年)黒田長政の三男・長興が福岡藩より5万石を分知されて立藩した。藩庁は秋月陣屋(福岡県朝倉市)。無城大名ではあるが城主格が与えられていた。4代藩主長貞の息女、春姫は高鍋藩秋月氏に嫁ぎ、次男は米沢藩財政再建に取り組んだ名君として名高い上杉鷹山である。

 

 

江戸時代の偉いさんの名前はややこしい

この話、お家の後継争いなんです。

江戸時代ですから、なんにしても幕府、将軍の認可が入りますので、自分に都合のいい世継ぎを据えるためにも、そういう認可を得るために偉いさんの口添えというか、将軍に直接ものが言えて、「それでいいよ」と言ってもらえるような偉いさんの助けが要ります。

で、偉いさんは偉いさん同士で競争があります。権力闘争、出世争いです。

そんで、この人たちの名前は、「なんとかのかみ」ってのがくっついていて、結構難しいのです。

 

5人の老中

水野出羽守(でわのかみ) 権勢一番、しかし年齢はだいぶいってます

青山下野守(しもつけのかみ)

松平和泉守(いずみのかみ)

松平周防守(すおうのかみ)

大久保加賀守(かがのかみ)小田原が領地

 

若年寄

本多遠江守(とおとおみのかみ)

 

京都所司代

水野越前守(えちぜんのかみ) 領地は浜松。出世欲あり。大名家の御家騒動は都合が良い。ちなみにこの人の名前は「忠邦」。知った名前でしょ。

 

幕府内の実力者

井伊掃部頭(かもんのかみ) 家柄的にも将軍家と繋がりが深い。

 

京都の公家、内大臣三条公修の母は、井伊家から嫁いできた。

秋月藩の当主、現在の殿様の母親 慈明院の姪は三条公修の息子に嫁いでいる。

慈明院が秋月黒田家の後継の養子(娘の婿養子)として考えているのは、この三条家に嫁いでいる慈明院の姪の弟になる。

 

 

素直な感想

江戸時代は管理が強く、面倒くさいです。

正直、御家騒動というのがシンパシーを抱きにくく、加えて上記の偉いさんたちの思惑、そしてこの人たちをどう利用するのかという展開になりますから、「どうでも良いじゃん、そんなこと」という気持ちになってしまいます。

 

しかし、男装の麗人。月代まで剃り込んで、この密命に取り組む主人公みちと、みちの力になるみちの兄 瑛太郎の友人にして、本多遠江守の配下 石上玖左衛門、さらには、みちの旅に同行する不思議で怪しい男米助、そして同じく怪しい女 おひょうの四人の旅は、なかなか面白い冒険談なのです。

 

この本、読み終えてから、さらに拾い読みしてノートを作りました。偉いさんたちが絡むとややこしいので、ちょっと整理したのです。そう言うことなしに読んでも面白いのですが、整理しないと登場人物の行動を理解しづらいのは事実です。

 

さらに、この冒険が終わった後の部分、後日談のように書かれていますが、「うぁあ、やっぱり女の作家だなあ」と思ってしまいます。ああいうの男の作家は書けないでしょうね。

 

 

これは、お勧め作品です。読んでみられると楽しめますよ。