この本は、どなたかのブログで知りました。ただ、どちらのブログだったのか思い出せません。心当たりところで本のタイトルで検索したのですが、ぼくの探し方が悪いのか、見つかっておりません。
ま、とりあえず読了しましたので、そのブログへの感謝と共に、これを書いております。
最近、本を読み終えることができなくなったと嘆いておりましたが、前回ネタにした「八月の御所グラウンド」に続いて、この作品も1日で読んでしまいました。
三上延って作家、覚えがあります。
そう、あの栞子さんの出てくる「ビブリア古書店の事件手帖」シリーズを書いた方です。
でも、こっちの帯は、こんなことが書かれています。
この世は、奇妙な出来事であふれているーーー特に先生の周りには。
文豪 × 怪異 × ミステリー
2023年9月、KADOKAWAから発行された本です。
偏屈教授と平凡学生が、怪異と謎を解き明かす。
ぼくは内田百閒、あるいは内田百間という作家を知りませんでした。
夏目漱石大先生のお弟子さんらしいです。兄弟弟子に芥川龍之介がいます。
実在した作家です。作品のいくつかは福井市図書館でも読めます。
百鬼園というのは、彼の別号です。
本名は内田栄造。
その内田百間(内田栄造教授)と、某私立大学での彼のドイツ語のクラスで学ぶ甘木という学生とのコンビが、さまざまな怪異を解決? してまわるんです。
この本は、4つの短い小説が入っています。
時代は、関東大震災から8年ほど経った頃です。大正。
怪奇ミステリーですが、やはりビブリア古書店的な感じのミステリー。書物が怪異になってますけども。三上延らしいミステリー。
その4つの短い小説てのは、以下の作品。
背広
コーヒーがまずいので「不純喫茶」と変な言い方をされる神楽坂にある千鳥という喫茶店は、不思議なことに食べ物は美味いのです。
印象が薄いというか他人に印象が残らない大学生の甘木くんは、その喫茶店でカレーとビールを頼みました。
ふと、横のテーブルを見ると、そこに座ってアイスクリームを食べているのは、甘木が通っている私立大学のドイツ語部教授の内田栄造先生。学内でも偏屈で通っており、他の先生に比べると異様に厳しい人です。
という主人公二人の出会いからお話が始まります。この時の千鳥の女給は宮子。この後のお話にも登場します。
文豪夏目漱石の形見の背広は、着ると不思議な夢を見せてくれるようです。
偶然、喫茶店でお互いよく似た背広を着ていたので、内田先生の背広と甘木の背広は入れ違ってしまいます。そして、内田先生が着ていた古い背広こそ、夏目漱石の遺族からお弟子さんの一人であった内田百間に形見分けとして渡されたものだったのです。
はい、夏目漱石が気だるそうに座っている写真をご覧になった方も多いでしょう。試しにネットで「夏目漱石の写真」で検索すると、腕に葬式の時の腕章を巻いた漱石の写真が出てきます。あの背広なんです。
ちなみにあの黒い腕章は、漱石の弟子芥川龍之介の葬儀の際のものでした。
猫
喫茶店千鳥で今年に入ってから働き出した女給の春代が体をこわして休んでいます。
甘木が春代を気にしているのを見抜いている宮子は、甘木を誘って春代の見舞いに行きます。
竹丈
内田先生は、芥川龍之介の葬式に参列した際に、持って行った竹のステッキを会場におき忘れて帰ってしまいました。
ところで、ドッペルゲンガーってご存知ですか?
自分と瓜二つのドッペルゲンガーという存在に、この世で遭遇してしまうと、死ぬという話を聞いたことがあるでしょう。
本人が死んだ後、そのドッペルゲンガーはどうなるんでしょうか。
春の日
内田先生は、甘木に出会う前に親しくしていた学生の伊成と二人で、現在の甘木としているように怪異と謎を解き明かしていたのです。
伊成が結核で亡くなってから、もう数年が経過しています。
新学期が始まってから最初の日曜日、甘木はカフェ千鳥の女給宮子や内田先生の昔のお弟子さん達と武蔵小金井に花見に来ました。
甘木は伊成のことを知りませんし、その日が伊成の命日だということも知りません。そして伊成の家が武蔵小金井にあるということも。
ところで、「件(くだん)」というのは動物の名前だということをご存知ですか?
「にんべん」に「牛」と書くように、件は、顔が人間で体が牛の、まあ、妖怪ですね。
件は、未来を予言します。
「件(くだん)の通り」とか言うのは、件の予言のように確実なとかいうニュアンスらしいです。
あまり上手に紹介できませんけど、興味があれば読んでみられるのも良いんじゃないでしょか。
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