先日、金井真紀さんの「パリのすてきなおじさん」を紹介させてもらったばかりではありますが、実は、その時彼女の本をもう一冊借りていたのです。
この本、「酒場學校」と続けて読んでしまうと、なんだか酒場が學校だったみたいな感じになってしまい、なんだかしょうもない話のような気がしてしまいます。ぼくは勝手にそう思い込んでしまって「パリのすてきなおじさん」を先に読んで、こっちはちょいと拾い読み程度にしておこうと考えてしまいました。
しかし、この本のタイトルは、酒場「學校」なのです。
草野心平は、詩だけでは食べてゆけず、新宿で「學校」という酒場を開いていたのです。
金井真紀さんの大学の卒論のテーマは、草野心平だったそうです。
もちろん、彼女がその店の存在を知って、行ってみようと思った時点では、すでに草野心平は亡くなっています。
そして草野心平氏が始めた「學校」という名前の酒場は、新宿の1丁目にあってこれまた閉店しています。
ただ、草野心平を手伝って「學校」という酒場で働いていた禮子さんという女性が、その後、同じ名前の酒場をゴールデン街に出しているということを金井真紀さんは知ってしまいます。
その現在の「學校」をやっている女性は、草野心平さんのことを色々知っているに違いない。会って話を聞いてみたいと金井真紀さんは興奮しました。
ということで、彼女はたった一人で、その酒場を訪れたのです。
そしてそこで出会った禮子さんが大好きになるのです。
草野心平さんが生きていた頃からの「學校」の客で、今でもゴールデン街の店に飲みにくる人たちもいます。
禮子さんや、個性が豊かすぎる常連さんたちのことが、この本に書かれています。それぞれの話は、これは小説のようです。
そして、遅くまで飲んで家に帰る途中で転んで骨折して入院した禮子さんのピンチヒッターとして、金井真紀さんは二ヶ月ほど店のママとなるのです。
最初は、彼女がアイスピックを持つだけで、客が全員緊張するという状態でしたが、金井真紀さんは、なんとか禮子さんの退院の日まで店を切り盛りしました。
ただ、禮子さんもすでに70代となっており、週のうち1日だけでも真紀さんにお願いできないかということで、金井真紀さんは引き続き水曜日の夜だけカウンターの中に立つことになります。
禮子さんの昔の話が語られたり、その後、「學校」の閉店の日までのことが綴られています。
はっきり言います。
この本は「パリのすてきなおじさん」の3倍くらい面白いです。