日本で一番面白い小説は何だ?
これ、むちゃくちゃ面白くて、かつ、しみじみ面白いのです。
基本的に小説として出来が良い。みなさんご存知だと思いますが、阿佐田哲也というのは色川武大の別名です。
主人公は、坊や哲という麻雀打ち、初登場時16歳。作者は、「徒手空拳でやれるのは博打しかなかった」と語っていましたが、主人公たちは戦争直後の時代を博打を全てとして駆け抜けて行きます。
よく負けるんです、まるで負けるのが博打だと主張しているみたいに。
この作品で「ピカレスク」という言葉を知りました。悪党小説。
これを原作の映画まで作った和田誠、伊集院静、吉行淳之介等々かなりファンが多いですが、黒川博之もまたこの小説とその作家のファンであるようです。
疫病神シリーズ
さあ、「疫病神」です。
これまたご存知の通り、黒川博行の人気シリーズで、彼はこれで直木賞をとりました。
主人公は、関西で建設コンサルタントなどというわけのわからない仕事をしている二宮。死んだ父親がヤクザだったということもあり、土建工事の際に変なトラブルが無いように、関係ヤクザなどとの間を上手にさばく仕事をしている。ケチな仕事でケチな男。
で、本物のヤクザの桑原という男がこの二宮とつるんで、いろいろな事件に遭遇し、なんとか旨い汁を吸おうとする話です。
ピカレスクですね。
これまたムチャクチャに面白い。
二宮にとって、桑原は疫病神。
きっと桑原にとって二宮も疫病神ですね。
この2人の関西弁のやり取りがなんとも言えず、いいのです。
テレビシリーズにも映画にもなっていて、テレビでは桑原を北村一輝が演じていて、実はぼくは見たことが無いのですが、ドンピシャリのように思います。
このシリーズ、一つ読むと、次から次へと読まずにはいられませんでした。
「破門」までの5作を読んで、早く次が読みたいと思いながら時が流れ、不覚にも、ぼくは6作目の「喧嘩(ステゴロ)」が出ていることを、今年になって初めて知りました。
去年、「ビブリア書店の・・・」シリーズに入れ揚げてたせいかな。これも、またいずれ。
さっそく「喧嘩」を読みました。うれしかったです。
前作のタイトル通り、組を破門された桑原は、はぐれ者の弱味を味わいながらも、組に戻るチャンスを敏感に嗅ぎ取り、戻るための資金を得るために、どうしても疫病神と再会してしまう運命の二宮とともに汚れた世界に手を突っ込み、手荒な仕事をやりおおせます。
今回もまた、迷コンビ。
関西弁ハードボイルドとか言われますが、ちょっととぼけた味がよろしいのです。
このシリーズ以外の黒川博行作品もいくつか読んでいますが、面白いけども、ちょっと暗くて、好きと言えば好きかもしれないけども、という感じがします。とぼけた味が上手に入ったこのシリーズは無敵です。