浮穴みみの「月の欠片」と冲方丁の「剣樹抄」
この本、Amazonの商品紹介で出てこないので写真撮りました。
続けて読んじゃったら、ああ小説って書き手によって色々なんだなあと、当たり前のことを思ってしまいました。
浮穴みみさんって初めてです
本の最後の作者の紹介を読みますと、
1968年旭川生まれ、札幌市在住。
2008年「寿限無 幼童手跡指南・吉井数馬」で小説推理新人賞。
2009年 受賞作を収録した連作短編集「吉井堂謎解き暦 姫の竹、月の草」でデビュー
とのこと、何作かのタイトルが紹介されています。
「月の欠片」は、明治維新直後、西南の役直前というタイミングの、築地明石町いわゆる築地外国人居留地のすぐ近く、舟松町にある<都鳥>という西洋茶店を根城にする連中が、連続殺人事件を解いていくという話です。
登場人物が、いかにもで、文章は読みやすく、軽く描かれた面白い作品です。
似たようなテイストの、別の作家が書いた作品を読んだことがあるなと思い出しました。
クセがなくて、さらっと読みやすい文章です。話の流れもスムースだし。登場人物も、個性的に作られてます。こういうの感心してしまいます。読み終わってから、最初に戻り、なるほどなあと確認したりしてました。
主人公の佐々木琢磨は、元会津藩士の子です。官軍に攻められて会津城は明治元年に落ちました。その戦で琢磨の家族はみんな死にました。たった一人助かった琢磨は、その時6歳。それから10年。いろんなところで書生や下働きをしてきましたが、どうにも血の気が多く、様々なお屋敷を転々として、ここがダメならもう終わりという書生の先として<都鳥>にやってきました。
腰には木刀をさしています。武士の気概は忘れてません。
<都鳥>の主人は、まるで西洋人みたいなルックスで、外国語もいくつかペラペラ、洋行帰りの元旗本片桐祐三郎。そして別の書生が二人。
新入りの琢磨は、他の書生仲間とともに、外国人医師のところで、外国の学問を勉強します。英語も美人のアリスさんから教えてもらいます。
そういうソサエティというか場所で連続殺人が起こるのです。
なんか設定読むと、お話の雰囲気がわかる感じでしょ。
冲方丁は面白い
連続して、「剣樹抄」を読みました。
これ連作短編集。
本当は、5月に出たばかりの「マルドゥック・アノニマス5」が読みたかったのですが、ちょっと図書館で見つからずに、この本をつかんでしまいました。
あ、余計な話を先にしますけど、「剣樹抄」を読み終わった時点で、「マルドゥック・アノニマス5」は予約を入れました。
時を戻そう。
「剣樹抄」には水戸光圀が登場します。黄門様になるずっと前の、若い水戸光圀。この作品の時点では、水戸藩主は父親で、光圀は世継ぎ、世子。
かなり剛。
冲方丁は「光圀伝」という作品を書いてます。水戸光圀については、あの作品だけで終わらせるのが惜しかったのでしょうね。
この光圀、父親からお務めを言いつかります。
幕府は、捨て子を保護して、諜者として育て隠密組織を作っているのです。<拾人衆>
光圀は、この拾人衆の頭目を務めよということです。
そして特務があります。
江戸の大火が続いているのですが、これは組織的な放火だと思われます。その放火組織とその後ろ盾を明らかにしなければなりません。
<拾人衆>は、百人ほどの子供たちで作られています。それぞれ特技を持っています。
さて、無宿者の子供、了助は、寺の床下で寝ている時に、旗本奴の戯れで父親を殺されました。その後江戸の大火で世話をしてくれていた無宿者のおじさんも死んでしまいました。
一人ぼっちで育つ中、棒っきれを振り回す独特の技を身につけました。そして、偶然、あの大火が放火であることと、その犯人たちを知るに至って、棒で一人一人叩き殺していきます。そして、何人目かを叩き殺した時に、やはりその放火犯を追っていた水戸光圀に捕まるのです。
光圀は、了助を<拾人衆>のアジトの東海寺に連れてきて、面倒を見ます。
<拾人衆>に加わるとも加わらないとも迷う了助は、それでも<拾人衆>の仕事に加わっていくのです。
水戸光圀と了助の二人が、この話の主人公。
そして光圀と了助の父親との因縁も絡んでくるのです。
面白いですよ。
この本に収録されている中編作品は、
- 深川の鬼河童
- らかんさん
- 丹前風呂
- 勧進相撲
- 天姿婉順
- 骨喰藤四郎
それぞれ独立した話ですが、リンクし連続しています。
読まなきゃ。
ああ、そして、今日、図書館から「マルドゥック・アノニマス5」を借りてきました。
また冲方丁(うぶかた とう)を連続して読んでしまい、挙句に6を心待ちにしなければならない日々が続くのです。