2日間で「白い巨塔」を観ました。
GYAOで6月9日まで、1から5まで全部観れるのです。
テレビ朝日60周年記念、5夜連続放送のあれです。
このバージョンも悪くない
正直、田宮二郎の出たのも、唐沢寿明の出たのも、あまり見た記憶がありません。
しかし、なんとなくストーリーを知っているので、両方をいい加減に観ていたんですね。
岡田准一、目が鋭いので、手術のマスクかけてると悪い人に見えます。
なんか、医学の理想とか、実の母親に対する気持ちとか、そういうのはあまり伝わってこないのですが、あの濃い顔で、いろいろと嫌らしい表情を見せてくれますので、素直に「悪いやつだな」と思いました。
この医療ミスって誰が悪いの?
ぼくは原作を読んでいません。
原作のせいなのか、ドラマ制作側のせいなのか、どうも納得できない箇所があるのです。
問題の手術を財前五郎が行うに至った経過
大阪の繊維問屋を営む柳葉敏郎演じる佐々木庸平が、糖尿病の検査のために難波大学病院にやってきます。
これを担当したのが、松山ケンイチ演じる里見内科准教授。
どうもおかしいと思うのでいろんな検査をします。
で、同級生で友人の外科医財前五郎に意見を求めます。
財前は、MRIの写真を見るなりすい臓がんであることを見破ります。
すごく早く発見できたので、手術をすれば助かる。
手術は、自分がすると言います。
手術直前の財前五郎の状況
さて、この前の時点で財前五郎は、激しくも卑劣な選挙戦を制して、浪速大学医学部の教授、そして第一外科部長となっています。
そして、天才的な腕を見込まれ、ドイツの学会で研究発表をすることの依頼を受けました。
こういうケースでは、普通の医者なら発表準備のためにまとまった休みを取って準備するらしいです。
この超忙しいドイツ行き直前で、財前は友人の里見内科医の頼みを聞いて、佐々木庸平のすい臓がん摘出手術を引き受けたのです。
かれが、そういう状態であるのは、大学の医学部中みな知っていました。
肝臓の異常の見逃し
大学病院で、柳葉敏郎の担当医となったのは、満島真之介演じる若い医師、柳原です。
柳原は、第一外科部長の回診で、佐々木庸平のベッドにやってきた財前に、肝臓の数値が良くないのでPET検査をしてはどうかと問いかけます。
患者のいる前での発言です。
財前は、それは必要ではないと柳原の提案を否定します。
そして廊下に出てから、柳原に対して、ああいうところで自分に意見することはやめろと叱ります。
柳原は、財前に対してイエスマンになりきることを決意します。
大学病院の中での保身と出世のためです。
しかし、優柔不断な柳原は、里見内科准教授に肝臓の数値が思わしくないからPET検査をしてはどうかと財前教授に言ったけど聞き入れてもらえなかったと、愚痴のように言います。
里見は、財前に柳葉敏郎へのPET検査をするように頼みます。
財前は、里見内科准教授に、PET検査をすると約束しましたが、結局、検査はしないまま手術の日を迎えます。
この辺は、非常に忙しい状況の中、ドイツ行きの日程は決まっておりということでの結果みたいな感じです。
で、すい臓がんの手術は成功します。
術後に患者に一回も会わなかった財前
術後、財前は忙しく、患者の佐々木庸平のところには一度も行きませんでした。
佐々木は苦しみ出しますが、財前は柳原に指示を与え、かれに任せます。
そして、ドイツに行き、講演と手術の披露は成功します。
日本では、里見内科医も佐々木の様子を診ますが、柳原は連絡の取れない財前からの指示を待ちます。
そして、肝臓が原因で佐々木庸平は亡くなります。
こういうの誰が悪いの?
財前の診たとおり、すい臓がんがありました。
財前は、これをきれいに切り取りました。
すい臓がんの手術としては成功です。
肝臓が悪いのは、また別の話です。
たしかに財前は肝臓のことを見逃しましたが、担当医の柳原はただただ第一外科部長のイエスマンになりきり、自分がおかしいと思っていた肝臓のことは放りっぱなし。
そして、当初、しつこいくらいにいろんな検査をし倒した里見内科医も肝臓は見逃していました。
財前が強烈に忙しい状況だったのは、二人ともよくわかっていながら、判断と実行を財前に全て投げつけた感じがします。
医療裁判
佐々木庸平の遺族は、財前を訴えました。
一番大きな理由は、手術後財前が一回も見に来てくれてないことです。
冷たい。
里見先生は親身になってくれたが、財前は全く世話をしてくれなかったと、法廷で亡くなった佐々木庸平の妻は叫びます。
「財前先生はどうしているの?」
佐々木庸平が亡くなる前、妻は柳原担当医に聞きます。
「お忙しので」と誤魔化すような返事。
ちゃんと状況を説明して、患者の気持ちをなだめないのか。
里見内科医は、病理解剖を勧めたり、なんかトラブルになるように持っていきます。
変なの。
見立ての問題だから、自分にも責任あると思うけども、家族との接触が十分だから責められないだけ。
なんでそんな疑問持ったのか
ぼくが、なんか変だなと思ったのは、里見内科准教授を演じる松山ケンイチの表情からです。
この役は、融通の利かない、真面目一方、研究一筋の頑固者、自分の信念を貫き通すというものです。
だから、自分の友人である財前のミスを裁判でも指摘し、大学を裏切るようなことになっても自分を曲げなかったのです。
清潔で正義を信じ、医学のおける自分の信念を貫く、孤高の人なのです。
だから、ちょっと変なところもあるのですが、視聴者は納得するのです。
しかし、松山ケンイチは、真剣な表情ができません。
締まりのない口元のせいなのでしょうか。
口調も、組織に迎合しない信念の人というよりも、ドロップアウトしているような人の感じ。
飄々としているというか、自分にはどうでも良いという感じがする喋り方です。
それでも面白かった
終盤、財前五郎がすい臓がんステージ4Aと判明し、もうすぐ死ぬんだというあたりから、まあ、けっこう面白かったです。
奥さんの夏帆(夏菜ではありません)が、愛人の沢尻エリカのところに行って、明日自分は出かけて病室にいないからと告げ、沢尻エリカが見舞いに来ます。
沢尻エリカはきれいで良かったです。
年齢的にも、いいんじゃないでしょか。
ちょうどいい感じです。
岡田准一とのからみもなんかリアル、って言うと変ですが、変じゃない意味でリアルでした。
最後に、財前は里見内科医と屋上に行き、二人で景色を眺め、実の母親に電話をします。
この財前五郎は、自殺せずに病室で息を引き取ります。
やはり、よく出来た小説なんですね。
人生かけた片想い。
自分の夢、野望への片想い。
どんなに熱心で、優秀で、才能があって、ものすごく努力しても、叶わないことがあるんです。
ふられちゃったね。