買い物から帰ると、向こうの月極駐車場の一番端、道路の間際に若い人がしゃがみ込んでいます。後ろ姿だし、体が細いし、髪はおかっぱのようで、男女の見分けがつきにくいのですけども、男性だと思われます。
そのまま放っておこうかと思ったのですが、横の建物の影に潜むようにして、道路の斜め反対側を覗いています。そこにアパートがあるのです。
昼間です。
隠れている建物の影に入っていて余計怪しい感じですが、下手に近づいていきなり刺されたりすると困るので、ぼくは放っておこうと思いました。
家内は気持ちが悪いので、何をしているのか訊いてこいと言います。
確かに、町内で変なことが起きても困りますね。
とりあえず、その若者に接近しました。
ひどく怪しい体勢です。
だって、建物の端ギリギリにしゃがみ込み、しかも真っ直ぐにしゃがむのじゃなくて、腰をくねっと捻っているんです。そして向こうから発見されないように、目だけを横に出して様子を伺っているって感じです。細い体で、髪型も総合すると、ふかわりょうの雰囲気。
すごく怪しいなという気持ちは、接近するにつれ増していきました。
ぼくが真後ろに立っても、そのふかわりょうは気が付かず、熱心に向こうのアパートの入り口を見張ってます。
遠くから見た時は、足元に可愛い猫でもいて、それを撫でているようにも見えましたが、猫なんかいません。
「こんにちは。何をしてますか?」
あっさり訊きました。
相手はしゃがんでるし、ぼくは真後ろに立ってます。変な気配がしたら、すぐに蹴飛ばせばひっくり返るでしょう。
彼が変な笑顔で言うのは、あそこのアパートに住んでいるが、鍵を忘れたので誰か帰ってこないかなと待っていると言うことです。
もしかしたら、狙っている女の子がいるので、ここで見張っているストーカーという筋書きもありだなと思いましたが、「暑いのに大変だね」と言って、ぼくは離れました。
事件が起こって、警察にあの男の人相を言わなきゃならなくなると、ちゃんと覚えてないかもしれないな、と家に入ってから思いました。
今のところ、ロッテの160キロ超の球を投げるピッチャーに似てたと答えるのが良いかもしれないなとは思ったのですが、もう一回ちゃんと顔を見ておいた方が良いかもしれない、案外派手な事件になるかもだし。
もう一度外に出たら、もうあの男は消えてました。
変なジジイに声をかけられたから今日は引き上げたのでしょう。
佐々木朗希、ピッチャーの名前を急に思い出しました。なんかあったらお巡りさんにそう言おうっと。
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