シャイタナって変な人物がいます。
いやあ、小説の登場人物なんですけどね。
彼のルックスの描写を読むと、ぼくが思い浮かべてしまったのは、有名な画家のダリ。
ちょっと悪魔的。
でも彼、お金持ちで、素晴らしいパーティーを開くって評判なんです。
そんで、この人、他人の秘密をつかんで、いじめるのが好きなんです。
シャイタナさんは、なんでも知っているってのが楽しいんでしょう。
ある日、名探偵エルキュール・ポアロは、嗅ぎタバコ入れの展示会に行きます。
そこで彼を呼び止めたのはシャイタナ。
自分の高級アパートに面白いコレクションを見にこないかと誘います。
人殺しをしたのだけど、なんの嫌疑もかけられず、安心して暮らしている殺人犯人達を集めるというのです。
一級品の人殺し。それが陳列品。
その陳列品をご覧に入れる晩餐。
結局ポアロは、この誘いを受けます。
約束の夜、シャイタナのところに8人の招待客がやってきます。
このうち、ポアロとスコットランドヤードのバトル警視、英国諜報部員のジェームズ・ボンド・・・じゃなくてレイス大佐、そして推理小説作家のオリヴァ夫人の4人は探偵役なんでしょうか。
そして他の4人は、探検家のディスパード少佐、繁盛している開業医のDr.ロバーツ、ブリッジの達人のおばあちゃんロリマー夫人、そして内気な美しい若い女性ミス・アン・メレンディス。え、もしかしてこの4人が、捕まらずに人殺しに成功しているの?
さて、美味しい食事が終わり、ブリッジで遊ぶ時間となります。
ぼくはブリッジってよく知らないのですが、マージャンみたいに4人で遊ぶらしいです。
人殺し達?かも知れない4人は、客間でブリッジのテーブルを囲みます。
探偵役の4人は、隣の喫煙室でブリッジをしました。
ホスト役のシャイタナは、人殺し達かも知れない4人がブリッジをしている客間のマントルピースの前に座ります。
夜も更けてきて、喫煙室でブリッジをしていた4人は、引き上げようかとマントルピースの前で居眠りをしているシャイタナに挨拶をしにいきました。
しかし、シャイタナは眠っていたのではありません。
死んでいる!
はい、そういうことでカードゲームに熱中している連中の近くで居眠りしていたシャイタナを、誰にも気付かれずに小さくて鋭い小さなナイフで見事に殺したのは誰なのでしょうか?
探偵チームは隣の部屋でゲームをしてたので、犯人は殺人犯かもしれない4人の中にいるのでしょう。
探偵チームの捜査が始まります。
そして最後にポアロの灰色の脳細胞が真犯人を突き止めるのです。
なお、ポアロ以外の探偵チームの3人は、それぞれアガサ・クリスティーが書いている別のシリーズというか作品の登場人物なんだそうです。残念ながら、ぼくはそれらの作品を読んでいませんけども。
読者へのサービスなんでしょうね。
面白そうでしょ。
ポアロ物13作目、1936年の作品で、今回はヘイスティングズは出ていません。
だから物語はヘイスティングズによって語られません。三人称です。ぼくはこっちの方が良いように思います。
ポアロは容疑者の4人にそれぞれ会いに行くんです。
あれ、また行動型探偵?と思ったら、かなりしょうもない質問を全員にするんです。
あの夜のブリッジのゲーム展開を説明して欲しいということ、それに、あの夜シャイタナの部屋にあった物を覚えている限り言ってくれというものです。
そしてポアロは、各人が書いたゲームのスコアシートを見て、手書き文字から各人の性格を把握しようとします。
それで犯人わかるの?
そう思うと、けっこうつまらないような気持ちになってきます。
しかし4人は人殺し。
それなりのドラマを過去に持っているのです。物語が4つ。そして今回のシャイタナの殺人事件で、5つの話があるみたいな感じ。
そうか、そういう構成の話か、などと思うと少しは面白いような気がしてきたり。
で、物語終盤に差し掛かってストーリーは大きく動きます。
面白いという気がしてきて、とうとう最後にたどり着き、ポアロが真犯人を暴くと、あら不思議、本当に面白い話だったのです。
基本的にアガサ・クリスティーは、謎解きという部分では、素晴らしいと同時に、「それ、何やねん」と言いたくなるような反則技を繰り出すのです。
この作品でもツッコミどころは結構あります。
あっさりエルキュール・ポアロには霊感がある、あるいは超能力で過去の犯行現場を見ることができると言ってもらえるとスッキリするかもしれません。
でもね、推理小説もエンタテイメント小説なんです。
「犯罪の謎解きの合理性が、そんなに大事なの? 読者の納得が、求めるものなの?」
とアガサ・クリスティーに言われたような気がします。
そんなものより、面白さです小説は。
面白いのです。面白ければ良いじゃないとアガサが笑ってますよ。