知らない作家は、まだまだたくさんいるんです。
ぼくは不勉強で、この作品の作者、築山桂さんの名前も初めて知りました。
NHKの土曜夕方6時過ぎからの時代劇になった原作も書かれているとのことです。
タイトルに(4)と書かれていて、シリーズものですね。
昔、時代小説ってちょっと苦手な気がしてましたが、ある人と酒を飲んでいた時に「時代小説は何でも書けますよ。ハードボイルドだって時代小説で書いているでしょ。現代小説より自由ですよ」って言われて、なるほどなと思ったことがあります。
時代考証ありで勝負してるみたいな気がしてたのですが、そうでは無さそうです。
この作家、築山桂さんも、嘘が多い方が楽しいって言ってるらしいです。9割嘘って。
さて、この作品の主役、左近は、東儀左近将監(とうぎさこんのしょうげん)と言う厳しい名前ですが、元々はお佐枝という名前の女性です。NHKのドラマでは、栗山千秋さんが演じたらしいです。
在天別流
昔、難波宮、大阪に都があった頃から四天王寺の儀式の折に麗しい音色を奏でて舞い踊る「在天楽人」と呼ばれるグループがありました。
彼らの正体は、帝の命を受け、異国渡りの知恵と武器をもって都を守り、民を救う忍びの者たちなのです。
天皇が難波を離れ京に都を移したのちも彼らは大阪に残り、古より続く浪華の町と、そこに暮らす民の守り神となりました。
彼らの闇の正体を「在天別流」と呼びます。
そして、代々の在天別流の頭目は「弓月(弓月王)」と呼ばれるのです。
今の世で、「弓月」と呼ばれるのは、左近の敬愛する異母兄、東儀上総(とうぎかずさ)。
左近
主人公の左近は、江戸生まれ。妾の子で、その存在を父に知らされてもいなかったのです。
どういうはずみで、彼女が在天別流に加わることになったのかは、このシリーズの最初の方の作品を読まなければわかりませんが、とにかく彼女が「弓月」の異母妹であることが明らかになり、彼女は大阪に来て、在天楽人、そして在天別流に加わったのです。
男装し、腰にノサダの名刀を差しています。剣の腕も立つし、短銃も懐に忍ばせているのです。
ただ、男性には見られず、ほとんどの人に男装の麗人、女性だということはわかります。
この作品冒頭で、迅八という盗人?に「へえ、こらまた別嬪さんや。お人形さんみたいに色白で、ギヤマンみたいにキラッキラの目」なんて言われてますから、綺麗なお姫さんなんでしょう。
この作品のあらまし
名刀を狙う「猿(ましら)の一味」が、世の中を騒がしています。
大阪の近くの村の庄屋が、楠木正成が腰に刺していたという名刀<小竜景光>が蔵から出て来たので、これを四天王寺まで持って行くので、見てもらいたいと連絡をして来ました。
四天王寺の僧侶が、在天別流の一員である左近に、この庄屋と名刀を護衛して寺まで連れて来てほしいと頼みます。
ところが、その村に左近が到着すると、庄屋と孫娘が無惨に殺されて、刀も無くなっていたのです。
というのが物語の発端です。
将軍のご落胤、仙台伊達家の家宝である名刀<鶴丸国永>など、いろんな事柄が絡んで来て、物語は大活劇に突入します。
当然最後はチャンバラです。
左近の異母兄、在天別流の頭目弓月も登場してきます。
読み終わって
予備知識があるからではなく、この作品、時代劇ドラマの原作にちょうど良い感じがしました。
弓月の登場シーンもなかなかです。
庭の石灯籠の傍に美丈夫が立っている。
闇に溶けるような藍墨茶の着流しに、刀は腰の一振りのみ。髪は総髪で、侍では無い。
秀麗な顔立ちは役者のようではあるが、まとう空気が怜悧に過ぎる。
って感じ。ちょっと端折って引用してます。
いろいろ調べてみると、この作家の築山桂さんは、京都生まれで阪大の博士課程で学問されたのですが、どうやら現在福井市に住んでらっしゃようなことがWikipediaに書かれてました。
へえぇ。