早川書房からミステリーの文庫本が出ていますよね。その中に<クリスティー文庫>ってシリーズがあります。
アガサ・クリスティーの作品の文庫です。
気がついたら、これ表紙の左上の隅に「ポアロ」とか「マープル」とか、出てくる探偵の名前が小さく書いてあります。作品を選ぶのに便利な気遣いです。
「青列車の秘密」 The Mystery of the Blue Train
これね、日本語タイトル付けた人えらいですね。
「ブルートレインの謎」、或いは「謎の寝台列車」はたまた「寝台列車の謎」では無くて、
「青列車の秘密」としたところがえらいです。
ル・トラン・ブルーってのが、パリのリヨン駅の構内にあります。
ちゃんとした立派なレストランです。
ニキータがターゲットを殺しに行って、厨房を逃げたレストランです。あ、リュック・ベッソンの映画の話です。
ずいぶん昔に、ぼくも家内と一緒にこの店に行きました。胃が疲れて何も食べたく無くなった頃に行ったので、大したものは食べませんでしたけども。
あれって、日本語に訳すると青列車。
これは全く関係ない話でした。
さて「青列車の秘密」です。
これはエルキュール・ポアロが探偵のシリーズ作品です。
本の中で、小説部分は11ページから441ページまでです。
でポアロが登場するのは、125ページの最後の3行からです。
ロンドンからニースへ向かうブルートレインに、探偵を引退し旅行して回っているエルキュール・ポアロが乗ってました。お約束通り、この列車の中で殺人事件が起こります。
ちなみに、この青列車、行程は、イギリスのロンドンからフランスのニースです。
イギリスとフランスの間にドーバー海峡があります。そこは船で移動し、大陸に着いたらまた青列車に乗り込むので、おそらく違う列車に乗り換えるということなのだろうなと思います。
殺人はニースの手前。
ぼくがクリスティーを読んだのは、ずいぶん昔のことです。イメージとしては、殺人事件をエルキュール・ポアロが「灰色の脳細胞」を使って解決するというもので、探偵が行動して事件を解決する類のものでは無いというものを抱いています。
しかし、この作品、名探偵が登場する前に、お話が結構あるのです。
読んでいると、ポアロの癖の強いところを取り除くと、ハメットの作品でもいけそうな感じがします。さらに、警察やヤクザが探偵を尊重せず、ちょっと痛めつけたりして、探偵が減らず口を叩くようになると、探偵の名前をマーロウに取り替えることも可能かも知れません。
クリスティー、懐が深いです。
彼女の作品を読み漁っていた頃のぼくは子供でした。
真夜中のパリ。あるアパートの一室で、怪しげなロシア人たちから、自分のことは自分で始末できる点では、誰にも引けを取らないアメリカ人の年配の男が、こっそりと、ある物を買い取りました。
そのアメリカ人がホテルに帰る途中、怪しげな白髪頭の男が雇った二人のチンピラが、アメリカ人を襲います。しかし、アメリカ人はポケットのリボルバーをぶっ放して、チンピラたちを撃退しました。
白髪頭の男は、今夜の襲撃が失敗することは分かっていました。
彼は「侯爵 ル・マルキ」と称する人物です。
白髪頭の男は、パポポラスという骨董屋を訪ねます。盗品でも買い取ってくれる男です。
白髪頭の男は、今夜の襲撃は失敗するのが分かっていたが、もう一つの計画で、あのブツを手に入れるからとパポポラスに告げて、帰って行きました。
陰で見ていた娘のジアが、パポポラスに、あの男の頭が不自然に大きかったと言います。そう、カツラをかぶるとあんなふうな感じになると父親が答えます。
という話から始まります。
このしぶとそうなアメリカ人は、大富豪で、こっそりと有名なルビーを買ったのです。このルビーを娘に与えます。
娘には、夫がいます。基本的にろくでなしで文無しの貴族です。
そして、娘には恋人もいます。当然こいつもろくでなしです。
自分への愛情を無くしている夫に対して、娘は悩んでいました。父親は、離婚するように勧めます。
こういう話が語られて、関係者の間で話が進み、さらには素晴らしいイギリス女性キャサリン・グレーが登場し、舞台は青列車の中へと進んでいくのです。
アガサ・クリスティーを舐めてはいけません。