昨日歩いていたら、お店の入り口に白髪を後ろで一本にまとめたおばあさんが立ってました。彼女の横には、たぶん生後5、6ヶ月の子犬がお座りをしてました。
少し細いように思ったその子犬の首輪にはリードがついていて、その端をそのおばあさんが持っています。
おばあさんは、少し笑いかけるような顔で通りに向いています。
子犬は、頼りなさそうな顔でこっちを見ていたので、ぼくはちょっと笑いかけました。雌なのかもしれません。犬はぼくが笑顔なのを認識して、ちょっと緩んだ表情でこっちを見ています。
おばあさんも笑顔です。ぼくと犬のやりとりを理解しています。
「6ヶ月くらいですか?」とおばあさんに話かけて、犬を撫でさせてもらおうかと思いましたが、やめました。
おばあさんが、あんまり友好的な顔をしているので、もしかして秋の終わりを感じて様子を見に来た冬の女王かもしれません。うっかり話しかけると、ぼくはそのまま連れ去られて、戻って来れなくなるかもしれません。家内はぼくを探して冒険の旅に出なくてはいけなくなるかも。
ずいぶん昔に読んだその物語では、男の子と女の子が薔薇のアーチのある庭で平和に過ごしていました。
夜の女王だったか冬の女王だったのか忘れましたが、とにかくその女王は男の子を自分の国に連れて行ってしまいます。
残された女の子は、男の子を連れ戻すために冒険の旅に出て、最後は男の子を連れて帰るのです。
救出された男の子はひどい目に遭っていたわけではなく、女王のところで、のほほんと暮らしていたみたいな。
突然思い出したその物語は、今考えると、不倫して女のところに行った旦那を奥さんが取り戻すまでの話なのかもしれませんね。
子供の頃は、そんなこと思いもつきませんでした。
まあ、とにかくそんなお話を思い出したぼくは、おばあさんに話しかけるのをやめて、さっさと歩き去りました。