70代の真実

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上田秀人「奥右筆秘帳シリーズ」はたまらないほど面白い

この前、葉室麟が好きだと書きましたが、時代小説はいろんなテイストがあり、それぞれに面白いですね。

 

で、上田秀人。

この人も大好き。新しい剣豪小説って感じかな。

 

iPhoneの中の小説、上田秀人の作品は、この「奥右筆秘帳シリーズ」12巻と「勘定吟味役異聞シリーズ」8巻、合計20冊入ってます。

 

 

最近あまりやってないみたいですが、hontoというジュンク堂がやっている電子書籍ストアが、数年前まで、年に2、3回ほど50%引き!!のクーポンてのをメールでくれたんです。

何冊買っても、一度の購入に使えるクーポン。

だから、こういうシリーズ物にハマると、そういう時に一気買いするのです。

北方謙三の「水滸伝」19巻もそのクーポンで買いました。

 

 

ま、そういうことはいいとして、上田秀人の上記2つのシリーズは、たまらないほど面白いのです。

今日は、そのうち「奥右筆秘帳シリーズ」を紹介します。

 

奥右筆秘帳シリーズ

密封<奥右筆秘帳> (講談社文庫)

密封<奥右筆秘帳> (講談社文庫)

 

とりあえず1冊目を貼り付けておきます。

 

奥右筆とは

奥右筆というのは、幕府の施政にかかわる全ての書類を作り保存する役目の役人です。

幕府という政府の中で行き来する全ての書類には、奥右筆の目が入り、そのサイン(花押)が無ければ書類としての効力が生じません。

 

身分的にはそれほど高いものではありませんが、非常に重要なポジションの役人です。

そして幕府の中のあらゆる情報が書類を通して、奥右筆の目に入ります。

 

また、大名の家督、縁組はもとより、役人たちの就任、昇進、離任一切に、奥右筆は意見をつけることが出来ます。

このため、給金は高くなくても、付届けの余得は抜群のポジションでもあります。

 

主人公

立花併右衛門

奥右筆組頭。課長みたいな。

手元に田沼家の家督相続願いが来て、一応その内容を吟味しようとするが、ある夜勤めの帰り道で賊に襲われ、田沼家の案件をしつこく調べず、さっさと通せと脅される。

これが、この物語の発端となります。

 

このおっさん、年頃の一人娘瑞紀と暮らしている。

 

柊  衛悟

立花家のとなりの家の旗本の次男坊。

涼天覚清流という剣術の大久保典膳道場にて、子供の頃から剣術に励んでいる。

かなりの腕。

 

当時の侍は、役人としての事務能力が求められ、武道などの腕があっても需要は無かったのです。

旗本の次男坊は、家督を継ぐ長男のスペアに過ぎず、長男に何かあれば家を継ぐだけが役目。従って、長男に男の子が生まれれば、用が無い。

どこかに養子の口でも見つけなければ、ただの無駄飯食いに過ぎません。

 

立花併右衛門が、夜道で賊に襲われたため、ボディーガードとして立花併右衛門に雇われることになります。

報酬は、わずかな駄賃と、どこか良い養子の口を世話すること。

 

二人の主人公と書きましたが、実質的に、この人が主人公。

上段の構えから、凄まじい一撃を放つ剣の使い手ですが、旗本の次男坊というキャラですから、感情移入できちゃいますよ。

 

立花併右衛門の娘 瑞紀は、幼馴染。衛悟が好きです。

 

 

悪役

いろいろたくさんいますが、この人が一番。

冥府防人

変な名前。本名ではありません。

小柄なくせに大太刀を差しています。

ものすごく強い。柊  衛悟も歯が立たない。

 

 

どんな話か

将軍位を狙う陰謀との戦い。

ベテランの奥右筆の知力と、一刀両断凄まじい豪剣のコンビが、巨悪と死闘を繰り広げます。

 

これね12巻あるんです。

そんで、1巻と言えば良いのか、1作と言えば良いのか、とにかく1冊ずつでも楽しめます。

その上で、12巻通してのストーリーがあります。

 

こんな作品どうやって作るんでしょうか。

全体の大きなストーリーだけを描いていくだけではなく、1冊の中にも盛り上がりを作っていくのですから、どう考えて書いていくのか、作り方自体、すごいなあと思ってしまいます。

 

そして、当時の幕府の仕組みとか、役人の状況とか行動など、しっかりと基礎固めをしています。

 

かてて加えて、ダイナミックな展開、殺陣の面白さ、もう夢中で読んでしまいます。

 

くノ一が江戸城の女中に化けて、将軍の暗殺を図り、刀を振り下ろす瞬間に、刀を抜くことが許されない城中で衛悟が鞘ごと脇差で、そのくノ一の刀を受けるシーンが、だいぶ後に登場します。

これ直前あたりからワクワクします。テンションの張り方がうまいんです。

 

もちろん、これ以外にもそういうシーンが沢山ありますよ。

剣豪小説でもあります。チャンバラ。

殺陣に説得力があるんです。

 

アクションシーンの見事さ、映画で観てもすごいと思うだろうシーンです。そいつを文章で楽しませてくれます。

 

全編通して衛悟を圧倒する冥府防人との決戦が最後に用意されています。

 

ワクワクする作品です。

たとえ時代小説が好きでは無いという方も、これはおススメです。

 

読み出したら睡眠不足になりますよ。

なんせ、たまらないほど面白いのですから。