70代の真実

70代年金生活者の生活と思ってること、その他思がけないことも

たまにはプロレスの話をしよう

「プロレスって八百長でしょう」

こういう言い方、ずいぶん昔ですね。

事前打ち合わせのあるエンタテイメントに「八百長」という言葉を持ってくる感覚が数十年の隔たりを感じさせます。

 

力道山の空手チョップ

ぼくが子供の頃、まだ、どこの家にでもテレビがある状況で無かったころ、力道山のプロレスを多くの人がテレビで見て興奮してました。

福井は街頭テレビってのは無かったですが、うちにあるテレビを近所の人と一緒に見ていた覚えがあります。

 

外人選手が、卑怯な手で力道山を痛めつけます。

レフェリーは、上手にごまかされ外人選手の反則に気が付きません。

「なにやってんだ!」

観客の不満は爆発寸前。

しかし、なんとか危機を脱した力道山が、ついに怒りを爆発させます。

空手チョップ。

外人選手がぶっ飛びます。

ワンツースリー

力道山の勝利を日本中の観客が喜びます。

 

展開としては、後のヤクザ映画、高倉健のストーリーと同じです。

 

力道山によって日本にもたらされたプロレスを、我々は初めて見たのです。

当初、あれは「試合」、本当の勝負だと思っていました。

少なくとも、今の相撲程度の真剣さをもって見ていました。

 

そうじゃないと気がつき出し、観客は少しずつ減っていったと思います。

小学生のぼくも見なくなりました。

力道山が亡くなる前の頃です。

 

 

再会したプロレスはアントニオ猪木

プロレスなんか見なくなって何年も経ち、ぼくは高校生になってました。

冬でしたね。

タツに入って勉強してましたから。

ちょいと一休みで、テレビ点けたんです。

 

プロレス放送。

いつもならチャンネル変えますが、基本的に福井では放送しているチャンネルが極端に少ないのです。

ちょっと見てました。

アントニオ猪木が、ジョニー・バレンタインというアメリカのプロレスラーと試合をします。

 

ぼくは知らなかったのですが、猪木が日本プロレスを辞めて、豊登らが作った東京プロレスという会社に移ったことがあったのです。

そして、その団体に、なんというタイトルなのか知りませんが、チャンピオンベルトを持ったジョニー・バレンタインが呼ばれて猪木と試合して、負けたという因縁があったらしいのです。

 

東京プロレスはつぶれて、猪木は日本プロレスに戻り、そして東京プロレス時代の因縁を引きづって、再び猪木とバレンタインが試合をするという、その試合がテレビで始まったのを見たのです。

 

いい加減な気持ちで、ちょっと時間つぶしに見たのです。

しかし、 その試合は、すごく面白かったのです。

 

ジョニー・バレンタインと言えばエルボードロップです。

そんなこと知らなかったのですが、実況アナウンサーはきちんと説明してくれます。

そして、さすがにジョニー・バレンタインがエルボー攻撃をすると、迫力を感じさせ見ているものを惹きつけるのです。

場外乱闘の際に、放送席の机をエルボー(肘打ち)で真っ二つに割って見せました。

試合自体は、ノーコンテストになったと思います。

アントニオ猪木を見たのも初めてでした。

バレンタインも良かったけど、まだ若い猪木が素晴らしかったのです。

その時から、ぼくはプロレスファンになってしまいました。

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なぜアントニオ猪木の試合を見るのか

最初に書きましたように、プロレスは筋書きのある、事前打ち合わせのあるエンタテイメントです。

技術の高い選手同士の組み合わせならば、互いに観客を楽しませる技術を目一杯披露することができます。

少し下手な選手相手だと、目一杯やると怪我をしたりする危険があります。

一流同士でも、たまにアクシデントが起きるのですから。

だから事前打ち合わせは必要なんだろうと思います。

 

でもね、そうは言っても勝敗の決まっている試合、何回も見ると飽きますよね。

 

ここが、アントニオ猪木は天才だと思うところなんです。

猪木のすごいのは、観客に「ひょっとして今日負けるんじゃないの」という気を起こさせるところなんです。

 

プロレスの見せ方

だいたい猪木は、さほどスターでもない選手と試合しても客を楽しませることが出来ます。

スター性の薄い選手というのは、技術の問題ではなく、客の気持ちをつかむことができないのです。

どれほどレスリング技術が高くても、客が喜ばなければ、それは二流の選手です。

そういうのを相手に、相手の良いところを引き出し、客に見せる。

猪木は、客を喜ばせるのが天才的に上手いのですが、試合相手が少々ショボくてもなんとかします。

 

自分の作った新日本プロレスという会社が、まだスター選手を呼べない状況でも興行が成り立つようにしてきました。

そして、良い選手が呼べるようになって、この一番という試合が組めるようになってから、「もしかして、この試合、猪木負けるかも」という気持ちを薄っすらと客に抱かせるようにしました。

ドラマを作るのが上手かったんです。

 

大一番の試合の前に、いろんな試合で対戦相手のすごさをアピールします。

まあ、このあたりは力道山時代からのやり方です。

でも、それを徹底し、洗練させてきています。

二流選手のスタン・ハンセンを大スターにした過程は見事でしたね。

 

猪木も、よく負けて見せましたから。

面白かったですね。

本当、天才です。見る方は緊張して、興奮して、楽しみました。

 

引退間近は、大事な試合も負けてました。

ハルク・ホーガンに敗れた試合なんて、場外で後頭部を鉄柱にぶち当てて失神。

すぐに駆けつけたプロレスラーたちが窒息しないように舌を引き出して、口からべろりと舌垂らして失神している写真がスポーツ新聞の1面に出ていて、けっこうショッキングでした。

エースが負けて、観客が大興奮しているのですから、すごいです。

あとで、ホーガンが、猪木から「もっとハードに来い」と言われて・・・なんてインタビューに答えてましたね。

 

 

ずいぶん昔に猪木は引退して、その後プロレス自体も変わりました。

今やっているのも面白いと思います。

でも、もうぼくは見なくなりました。

 

たまに昔のプロレスラー思い出したりしますが、名前が出てこなかったりして、年取ってくると辛いです。