満洲国って
いろんな人たちの夢の国だったみたいですね。
満州(現在の中国東北部)に、1932年から1945年までの間存在した国(?)でした。
皇帝がいました。皆さんご存知の「ラストエンペラー」、清の最後の皇帝溥儀が、清の滅亡後、自分の民族(満洲人、女真族)の故郷に戻り、皇帝となりました。
建国の理念
五族共和
日本人、漢人、朝鮮人、満洲人、蒙古人の五族が、協調して暮らせる国を目指す。
王道楽土
武力による統治を「覇道」と言いますが、これに対して徳による統治を「王道」と言います。
西洋列強のような武力をもってする統治ではなく、東洋的な「徳」をもって統治し、アジア的理想国家「楽土」を実現しようというものです。
どうです、ちょっとワクワクするでしょう。
建国のことや関東軍及び満鉄
ここんとこ、日清戦争あたりからちゃんと書き出すと歴史の教科書みたいになるので、書きません。
石原莞爾の「関東軍満蒙領有計画」あたりがだいぶ影響を与えているのだと思いますが、日本の関東軍が張作霖を爆殺したり、満州事変をやらかしたりした結果、建国してしまったのです。
ですから、関東軍と満鉄(南満州鉄道)が影響力を発してました。
満洲で映画作ってた甘粕正彦
でね、満鉄には、「満洲映画協会(満映)」というのがありました。
ここで映画作ってたんですね。
李香蘭です。
山口淑子。
し〜いなのよ〜る
それから「甘粕事件」、被害者の名前で「大杉事件」とも呼ばれていますね。
人殺しです。
すごい悪人みたいな印象です。
でも、満映で一緒に仕事してた森繁久弥の証言や、満映時代の行動についての証言を読むと、良い人みたいな印象に変わります。
ウィキに載ってる森繁久弥氏の証言を引用すると、「満州という新しい国に、我々若い者と一緒に情熱を傾け、一緒に夢を見てくれた。ビルを建てようの、金を儲けようのというケチな夢じゃない。一つの国を立派に育て上げようという、大きな夢に酔った人だった」と非常に良い感じ。
で、満洲国だけど
日本を第二次世界大戦に引きずり込み、敗戦に導く発端みたいなものですが、どうも当時の日本人にとっては、「夢」とか「自由」とか、あるいは西部劇の世界のような印象だったようです。
馬賊とか、まあロマンあふれる新天地ということでしょうか。
いよいよ小説の話
目次を見てください
開幕
第1話 夕陽と大陸浪人
第2話 恋と革命
第3話 皇帝の護衛官
第4話 夢の瓦礫
閉幕
4つの連続する中編4つと、開幕、閉幕で一つのストーリーになっています。
開幕、閉幕は、現在(と言っても1991年)の日本が舞台。
主人公の湊 春雄は現在73歳。
ふとしたことで50年ほど前の満洲国のことを思い出して物語が始まります。
どんな話か
主人公の湊春雄は海軍兵学校出のエリート軍人でした。
ある事件で軍人としての将来が無くなり、大連の満鉄調査部に飛ばされました。
日本からはるばる大連にたどり着き、満鉄調査部に出頭すると、新京(満洲国の首都)の満洲映画協会に行けと言われます。
軍の機密の映画フィルムを届けに行くという任務です。
で、向こうに着いたら、そのまま満映にとどまり、理事長の甘粕正彦の不正か弱みを掴んでこいという訳です。
すぐに怪しい男、西風に出会います。
長身痩躯の気障な優男、白麻の背広にステッキを持ち、頭には粋なパナマ帽。
面長で彫りが深い目鼻立ち。
「湊くんを歓迎するよ。ようこそ、夢の入り口へ」
湊春雄は列車に乗って満洲新京を目指します。
伝説の馬賊の親玉ほか、いろんな怪しい人たちが登場してきます。
満映に潜り込み、いろんな事件に出会い、そして日本の敗戦。
甘粕正彦も出てきます。男装の麗人、東洋のマタハリ、川島芳子も出てきます。はい、李香蘭も。
赤い夕陽の曠野。夢のような冒険。
面白かったのです
ぼくは、この作品好きです。
軽い歯触り。
それでも切なくなる後半。
ロマンです。
冒険小説の王道ですね。
面白くないはずありません。
読みましょう。