70代の真実

70代年金生活者の生活と思ってること、その他思がけないことも

クラウンの模型のタバコ入れ

小学校の同級生で、その後の消息を知っている人は割と少ないです。

高校の同窓会というのはあるんだけども、小学校のは無かったのです。

もっとも、高校の同窓会も、会場に向かう途中の道でスーツを着たおじいさんがぼくの少し先を歩いていて、あれ?同じ所を曲がって、まるで行き先がぼくと同じみたいだと思っているうちに会場のホテルに入り、会場に行くと、そのじいさんが受付をしていて、ええっ!!よく見ると、このじじい、同じクラスの生徒だったと気が付いて、すっかり嫌になって以来、行ってませんが。

一般論ですが、大きな会社に勤めた人は、皆さん老けるの早いですね。ま、職場で磨かれて大人になるということなんでしょうが。

 

 

小学生の頃、絵が上手かった同級生がいました。

画用紙に描かれた人の顔の、顎の線や目がはっきりしていたのを覚えています。よく見たら、彼の顔に似ていました。

彼の家にも何回か遊びに行きました。

子供の時は、彼の家の仕事について、よく分かってませんでしたが、自宅と一緒になった事務所の応接間で、お母さんがお茶とお菓子を出してくれました。

メガネをかけた、細い体のお母さんでした。

お菓子を食べながらテーブルの上の、トヨタクラウンの模型が気になりました。ミニチュアカーなんかよりもずっと大きく、子供がつかんで遊ぶ玩具ほどの大きさですが、ドッシリとしていました。

「これ、タバコが入っているんや」

彼は、クラウンの屋根を持ち上げました。確かに乗車席の中にはタバコが並んでいました。

そんなの初めて見たので、印象が強かったです。

応接間は最初の頃だけで、すぐに彼の部屋に入っていましたが、彼と言えば、そのクラウンのタバコ入れを思い出します。

 

ぼくが東京から地元に戻ったとき、彼は地元では誰でも知っているような人になっていました。

 

いろんな所で会いましたが、ちょっと挨拶を交わし、少し話をする程度でした。

人とたくさん接する仕事だったし、みんな彼の顔を知っていて、外ではプライベートも無かったのでしょう。

時折、ボソッと本音みたいなことを言ってました。

 

ある日、彼がガンで亡くなったと新聞で読みました。早かったですね。

立派な仕事でしたが、大変な人生だったのだと思います。

他人のことをかわいそうだと思うのは申し訳ありませんが、亡くなった記事を見た時に、かわいそうだと思いました。

 

この前、子供の頃遊びに行った彼の家だった建物の前を通りました。

そこは彼のお父さんがやっていた仕事の事業所です。お父さんはもう引いています。

応接間には、もうクラウンのタバコ入れは無いでしょう。