70代の真実

70代年金生活者の生活と思ってること、その他思がけないことも

大菩薩峠

日本で一番面白い小説は何だ?

それは、中里介山の「大菩薩峠」なのだ。

 

って、きのうの文章書いている時に、この書き出しで行こうと考えてました。

 

大菩薩峠

大変な超長編小説で、途中から作者は世界一の長編を目指したらしく、結局終わらせることができないままです。

終わってないことは、あまり気にしなくても大丈夫て言うか、気になりません。

長すぎるので、ぼくも最終までたどり着けてませんし。

それでも、強烈に面白いのです。

 

大菩薩峠 全20巻セット

大菩薩峠 全20巻セット

 

 

登場人物がすんごく多いです。しかも、各人の個性が際立っていて、また、それを見事に描いています。

各人の物語があるのです。単品でも、魅力があります。

その各人ごとの物語が、からまり合い、全体の物語となって行きます。

 

時は幕末。主人公の名は机竜之介。

この主人公は酷い奴です。

冒頭、甲州街道大菩薩峠で、いきなり小さな女の子を連れて旅している爺さんを辻斬りします。

この竜之介、峠のふもとの剣術道場の息子、若師範です。もうじき、甲源一刀流の師範宇津木文之丞と御岳神社の奉納試合で立ち会うことになっています。

対戦相手の妻お浜は妹と偽って竜之助を訪ね、試合に負けてくれと頼みます。これが良い女。竜之助は頼みを断り、お浜を捉えて縛り上げ、手ごめにしてしまいます。あげく竜之助は試合で文之丞を叩き殺してしまい、お浜を連れて江戸へ逃げます。

人でなしですね、本当に外道、鬼畜です。

お浜と江戸で暮らしますが、結局、竜之介はお浜を殺してしまいます。

 

これが物語のイントロです。

なんともすごい始まりですが、竜之介は新撰組の連中と付き合いが始まります。

そして、なぜか天誅組の変に参加し、敗走する途中、隠れていた山小屋で、追っ手の爆弾の爆発により失明してしまいます。

 

冒頭、竜之介が斬り殺した爺さんの連れていた女の子お松を、後からやってきた七兵衛が面倒を見てくれます。この七兵衛、只者ではありませんが。

死んだお浜にそっくりな心中の生き残りのお豊、卑しい身ながら美しいお君、興業を仕切るお角、そして豪商の娘ながら顔に火傷を負ったお銀様、様々な女性たちがそれぞれの運命を必死に生きていきます。

お君と幼馴染の米友、お君が好きになり側室に迎える旗本の駒井甚三郎、鳥や獣と心が通わすことのできる少年茂太郎等々、むちゃくちゃ個性的な登場人物たちが、それぞれの物語を引っさげて登場してきます。

 

面白いですよ。ぼくら夫婦が、シーズン7まで見て、8を心待ちにしているゲーム・オブ・スローンズの100倍面白いです。

 

また、チャンバラシーンがなかなか良くて、竜之介は江戸で土方歳三たちと付き合いが出来るのですが、土方が数人の仲間と共に、幕末の剣豪(実在)島田虎之助を襲うシーンがあります。

たった1人で、島田虎之助は刺客を次々と斬って、最後に残った土方を追い詰めます。しかし、まさしく小便ちびりそうになった土方を島田虎之助は、殺さず、去らせます。

これを物陰から竜之介は見ていたのですが、ついに斬り合いの中に出て行くことは出来ませんでした。このシーン、ぼくは好きです。

それと、盲目になった竜之介を湯治治療のためにお雪ちゃんという若い娘が、白骨温泉へと連れて行きます。途中、数名の侍がちょっかいを出します。若い娘と盲目の男ですから、ちょろいと踏んだんですね。竜之介は刀を抜き「音無のかまえ」を取ります。敵の侍の中で、一番腕の立つ奴が、睨み合いの中で、とうとう危険に気がつきます。こいつが「出るな」と叫ぶ前に、仲間は竜之介に斬りかかり、全員やられてしまい、この竜之介の剣法に気がついた奴だけが、動かず、生き残ります。

などなど、殺陣も面白いですよ。

 

ぼくは、青空文庫で読みました。

ぜひお勧めします。読めるところまでで良いのです。かなりのヴォリュームを読むと思いますが、おそらくぼくが読んだあたりで止まるのではないかと思いますから安心して読んでください。

実は、だいぶ行ったあたりから、作者が世界一の長編ということを目標にして、間延びし始めます。ぼくは、そこあたりで止まりました。それでもそこまではすごい量ですよ。

しかし、これを読まずに、何を面白いと言えるでしょうか。読みましょう。読んでください。